特定技能外国人も転職が可能であるため、申し出があった場合には適切な手続きが必要です。そのため、企業としては転職を防止するための取り組みが重要になります。
本記事では、特定技能外国人が転職するリスクやハードル、転職する際の要件、必要な手続きについて解説します。また、 特定技能外国人の転職を防止するポイントについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
特定技能外国人は転職できるの?
特定技能外国人の転職は可能ですが、ハードルが高いのが現状です。たとえば、転職先が決まった後、在留資格の変更許可申請が必須となります。
在留資格変更申請手続きには時間がかかるケースが多く、新しい職場でのスタートが予定よりも遅れる可能性も考慮しなければなりません。その際、前の職場の退職時期を見誤ると、新しい職場での勤務が許されるまで、収入が得られないため、経済的な不安が生じる場合があります。
特定技能外国人が転職するリスクやハードルは3つ
次に、特定技能外国人が転職するリスクやハードルについて解説します。
- 手続きには受入れ企業の協力が不可欠
- 前の在留カードの在留期限を過ぎても新しい職場の在留カードが交付されない期間、一切の就労活動ができない
- 在留資格申請が不許可の場合は帰国しなければいけない
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.手続きには受入れ企業の協力が不可欠
転職希望者が従事できる業務は、あらかじめ出入国在留管理局によって発行された指定書に記載されている活動に限られます。この指定書には、企業名や業務区分が明記されており、これらの条件から逸脱することは許されません。
転職を成功させるためには、新たな職場となる企業の全面的なサポートが必要です。このサポートには、在留資格の変更許可申請の手続きに必要な書類の提供や、外国人従業員のサポート体制の構築が含まれます。
こうしたプロセスを経て初めて、特定技能外国人は新しい職場での活動を開始できます。
2.前の在留カードの在留期限を過ぎても新しい職場の在留カードが交付されない期間、一切の就労活動ができない
退職後に新しい職場の在留カードを得るまでの間、指定書に記載された特定の業務以外での就労が認められていないため、この期間中の収入確保が困難になります。
そのため、在留資格変更の許可が出るまで数ヶ月を要する場合があるため、十分な準備と計画が不可欠です。
3.在留資格申請が不許可の場合は帰国しなければいけない
申請が却下されると、日本に合法的に滞在する資格を失うことになり、帰国せざるを得なくなります。
在留資格の変更申請には不確実性が伴うため、特定技能外国人が新たな仕事を見つける際には、この不許可という結果に備えて計画を立てなくてはなりません。
特定技能外国人が転職する際の要件
次に、特定技能外国人が転職する際の要件について解説します。
- 特定技能外国人側の要件
- 特定技能外国人を受け入れる企業側の要件
それぞれについて詳しくみていきましょう。
特定技能外国人側の要件
まずは、特定技能外国人側の要件を解説します。
転職先で業種が変わらない場合
在留資格「特定技能」を取得するには日本語能力試験N4以上の資格と、産業分野別の特定技能試験に合格しなければなりません。しかし、同じ業種内での転職の場合は技能試験の再受験は免除されます。
たとえば、ある介護施設で働いていた外国人が、別の介護施設への転職を希望する場合、介護分野の特定技能試験は免除されます。ただし、新しい職場での就労を開始するには、在留資格変更許可申請を行い、新たな在留カードと指定書を取得しなければなりません。
申請に際しては、健康診断の結果や住民税の課税・納税証明書や源泉徴収の税関連の書類など、必要な書類の準備が不可欠です。
転職先で業種が変わる場合
特定技能外国人が異なる産業分野へ転職する場合、新しい分野の特定技能評価試験に合格する必要があります。たとえ産業分野が同一でも、業務区分が異なる場合は新たな評価試験の合格が必須です。
この試験は、その産業分野や業務区分によって内容が異なり、すべての産業で年間を通して試験が実施されているわけではありません。したがって、転職を計画する際は、試験の実施スケジュールを確認し、事前に準備を進めることが重要です。
特定技能外国人を受け入れる企業側の要件
次に、特定技能外国人を受け入れる企業側の要件を解説します。
特定産業分野に該当している
特定技能外国人の雇用を検討する企業は、まず自社が対象となる特定産業分野に属しているか確認が求められます。業務内容によって、在留資格の適用が異なるため、企業は従事させる予定の業務が特定技能で許可されている範囲内にあるか詳細に検討しなければなりません。
たとえば「建設」分野内でも、業務内容によって「建築」や「土木」といった異なる業務区分に分けられます。このような分類が特定技能外国人の就労可能範囲を決定するため、企業は自社の業務がどの業務区分に該当するのか正確に把握し、適切な手続きを進める必要があります。
なお、特定技能の職種については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【2023年最新版】「特定技能」1号・2号とは?職種12分野の業務内容やよくある質問も徹底解説!
必要な試験や修了すべき技能実習を確認する
候補者が必要な試験や技能実習を修了しているか事前にチェックすることが大切です。特定技能の取得には、日本語能力の証明と特定の技能試験の合格が基本要件となります。
もし、転職者が前職と異なる分野に移る場合は、新たな技能試験への合格が不可欠です。企業側は、雇用予定の外国人が適切な資格を持っているか確認し、必要に応じて試験受験や技能実習の手配をするサポートが求められます。
特定技能の転職に必要な手続き
次に、特定技能の転職に必要な手続きについて解説します。
- 転職前の企業が行う手続き
- 受入れ企業が行う手続き
- 外国人が行う手続き
それぞれについて詳しくみていきましょう。
転職前の企業が行う手続き
特定技能外国人の転職に際しては、転職前の企業にもいくつかの重要な手続きがあり、以下のステップを踏む必要があります。
- 出入国在留管理庁への届出
退職する外国人労働者に関して、出入国在留管理庁へ届出を提出する。これには「特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出」と「特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出」の提出が含まれる
- ハローワークへの届出
雇用保険被保険者資格喪失の届出をハローワークに提出する。外国人労働者の場合、「外国人雇用状況の届出」も必要になるケースがある
- 一般的な退職手続きの実施
日本人労働者の退職時と同様に、社会保険の喪失手続きや源泉徴収票の発行、退職証明書の提供など、標準的な退職手続きが必要となる
これらの手続きは、特定技能外国人のスムーズな転職を支援し、法的義務の遵守を確実にするために不可欠です。
受入れ企業が行う手続き
外国人労働者の在留資格変更許可申請に際して、以下の書類を提出する必要があります。
- 雇用条件書
- 特定技能外国人の支援計画書
- 納税証明書
- 健康保険・厚生年金保険料領収証
- 役員の住民票
これらの書類は、企業が適正な労働環境を提供しているか、外国人労働者に対して適切な支援が行われているか確認するために必要です。
さらに、受入れ企業は、在留資格が交付された後も、四半期ごとの定期届出や契約変更時の随時届出を行い、外国人労働者の就労状況が適切に管理されていることを保証しなければなりません。
外国人が行う手続き
特定技能外国人が転職する際には、在留資格変更許可申請が不可欠です。この申請は、申請人自身に関わる書類、新しい受入れ企業に関する書類、そして専門分野に関する書類に分類されます。
- 申請人が提出する書類
在留資格変更許可申請書や健康診断表、納税証明書、源泉徴収票など、申請人の健康状態や経済的責任を証明する必要がある
- 受入れ企業が提供する書類
登記事項証明書や労働保険料の納付証明書などがあり、これらは企業が法令を遵守している点を証明する
- 専門分野に関する書類
技能試験の合格証明書や実習修了証が要求され、申請人の資格や技能が適切であることを証明しなければならない
特定技能外国人の転職を防止する3つのポイント
次に、特定技能外国人の転職を防止するポイントについて解説します。
- 適正な賃金や待遇を設定する
- 適切な教育係を配置する
- 受け入れ体制を構築する
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.適正な賃金や待遇を設定する
外国人労働者は日本人労働者と同様に、労働条件に敏感であり、その待遇が業務の負担や責任に見合っていないと感じると、転職や退職を検討する可能性が高まります。
適正な評価を受けていないと感じた場合、その不満は業務へのモチベーション低下につながり、最終的には職場を去ることを選択するかもしれません。
したがって、企業は外国人労働者に対しても、日本人労働者と同等の公平な基準で賃金を設定し、業績に応じた昇給や昇格の機会を提供することが求められます。
なお、外国人労働者の賃金については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:外国人労働者の平均賃金とは?在留資格ごとに賃金の差が生じている理由や基本的なルールを徹底解説!
2.適切な教育係を配置する
日本での生活と仕事に対する不安を抱える外国人従業員にとって、業務指導だけでなく生活面でのサポートを提供できる教育係は、安心して働き続けるための大きな支えとなります。
金融や医療、行政手続きのサポートはもちろん、日常生活の小さな悩みや不安にも耳を傾けることが、信頼関係の構築につながります。教育係は、外国人従業員の母国語を理解し、文化的背景にも配慮ができるスタッフを選ぶことが理想的です。
3.受け入れ体制を構築する
外国人従業員の母国語を話せる人材が社内にいない場合が多いため、企業はほかの方法で支援体制を築く必要があります。たとえば、従業員が特定技能外国人の文化や言語について学ぶことで、理解と信頼の基盤が作れます。
また、入社後のサポートとして定期的な日本語研修を開催すれば、外国人従業員のコミュニケーション能力の向上にも効果的です。また、業務マニュアルを外国人従業員の母国語に翻訳し、提供するのも役立ちます。
特定技能外国人の転職でよくある3つの質問
最後に、特定技能外国人の転職でよくある質問について紹介します。
- 質問1.在籍期間が短い状況で転職した場合のビザ更新への影響は?
- 質問2.特定技能の引き抜きに関する自粛要請とは?
- 質問3.特定技能の転職にかかる期間は?
それぞれについて詳しくみていきましょう。
質問1.在籍期間が短い状況で転職した場合のビザ更新への影響は?
特定技能1号の場合、在留期間は通算最大5年と定められており、定期的な更新が必要です。更新の際には、これまでの雇用状況や保険料の納付状況などがチェックされます。
もし、短期間での転職が複数回あり、転職理由が個人的なものであった場合、在留資格の更新が難しくなるリスクがあります。
在留資格の更新をスムーズにするためにも、転職の際の理由を明確にし、必要な書類を整えておきましょう。また、年金や健康保険料の納付状況を良好に保つことも、更新時にポジティブな影響を与えます。
質問2.特定技能の引き抜きに関する自粛要請とは?
前職の引き抜きを自粛するように各分野の特定技能協議会から推奨されているのは、外国人労働者の過度な地域集中や特定の産業への偏りを防ぐためです。この規則を無視しての転職は、転職先の企業が特定技能労働者を受け入れられなくなるペナルティにつながる可能性があります。
ビザ更新時には、転職回数や転職の理由が評価され、個人的な理由での頻繁な転職は在留資格更新に不利に働く場合があります。したがって、特定技能1号ビザ取得者は、転職を検討する際には慎重な判断が求められるとともに、受け入れ企業もこのような規定を理解し、適切に対応しなければなりません。
質問3.特定技能の転職にかかる期間は?
審査期間は一般的に1〜2か月程度を要し、さらに必要書類の準備にも約1か月の時間が必要とされています。したがって、特定技能の転職には最短で約1か月半、最長で3か月程度の期間が見込まれます。
転職を検討している特定技能外国人は、新たな職場での勤務が可能になるまでの期間に収入が途絶えないような計画の立案が不可欠です。
まとめ
本記事では、特定技能外国人が転職するリスクやハードル、転職する際の要件、必要な手続き、特定技能外国人の転職を防止するポイントについて解説しました。
特定技能外国人の転職は可能ですが、ハードルが高いのが現状です。転職先が決まった後、在留資格の変更許可申請などが必要であり、この期間中は収入が得られないため、経済的な不安が生じます。
また、手続きには時間がかかり、外国人本人や受け入れ企業、在籍中の企業のそれぞれに必要な手続きが発生します。そのため、企業としては転職を防ぐための対策が不可欠です。
特定技能外国人を雇い入れる際は、適正な賃金の設定や教育係の選任など、特定技能外国人がモチベーション高く就労できる環境を整備しましょう。
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