外国人労働者の平均賃金とは?在留資格ごとに賃金の差が生じている理由や基本的なルールを徹底解説!

外国人労働者の雇用を検討している方で、平均賃金や賃金の支払に関する基本的ルールについて理解したいという方もおられるのではないでしょうか。

この記事では、外国人労働者の平均賃金や在留資格ごとに賃金の差が生じている理由について解説します。また、外国人労働者の賃金に関する基本的なルールや賃金設定のポイントについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

編集部

外国人労働者の平均賃金とは?

まずは、外国人労働者の平均賃金について解説します。

  • 外国人労働者全体の平均賃金
  • 在留資格区分別の平均賃金

それぞれについて詳しくみていきましょう。

外国人労働者全体の平均賃金

厚生労働省が2022年に発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、外国人労働者の平均賃金は、24万8400円でした。同年、日本人の平均賃金は男女合算で31万1800円、男性のみが34万2000円、女性では25万8900円と報告されています。

このデータを基にすると、外国人労働者と日本人労働者の間には、平均で約6万円の差が存在します。この結果により、外国人労働者の賃金が日本人に比べて低い状況が浮き彫りになりました。

この賃金格差は、労働市場における外国人労働者の立場や待遇の問題を示唆しています。
参考:令和4年賃金構造基本統計調査 (1) 賃金の推移|厚生労働省

在留資格区分別の平均賃金

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、在留資格区分による外国人労働者の平均賃金には顕著な差が存在します。専門的・技術的分野で働く者の平均賃金は月額29万9600円に達し、この分野は高い技能を要する職種である点が反映されています。

一方で、特定技能の労働者は月額20万5700円、技能実習生はさらに低い17万7800円となっており、専門職種に比べて顕著に低い水準です。

また、身分に基づく資格を持つ者の賃金は28万7000円、そのほかのカテゴリーでは22万0900円となっており、在留資格によって労働者の経済的状況が大きく異なることが明らかになっています。
参考:令和4年賃金構造基本統計調査 (8) 在留資格区分別にみた賃金|厚生労働省

外国人労働者の在留資格ごとに賃金の差が生じている理由

次に、外国人労働者の在留資格ごとに賃金の差が生じている理由について解説します。

  • 身分や地位に基づく在留資格の場合
  • 技能実習生の場合

それぞれについて詳しくみていきましょう。

身分や地位に基づく在留資格の場合

永住者や日本人の配偶者等の資格を持つ者は、原則としてどの職種にも就職可能です。しかし、外国人労働者の多くが製造業やサービス業に従事しており、これらの分野では単純労働が主であるため、技術習得の機会が限られ、昇給の可能性も低くなりがちです。

このように、就業可能な職種の範囲が広いにもかかわらず、実際には低賃金の仕事に就くことが多いため、賃金の差が生じています。

技能実習生の場合

技能実習生の在留資格は、日本の技術や知識を開発途上地域に移転する目的で設けられた制度です。平均賃金は月額17万7800円と、在留資格区分別でみると最も低い水準です。

この低賃金の背景には、技能実習生を受け入れる企業が監理団体を介していることが挙げられます。実際、受け入れの大多数はこの団体監理型で行われています。

監理団体や送出機関が最低賃金を基準にしていること、受け入れ後の企業変更が原則不可であるため、技能実習生は労使関係において不利な立場に置かれがちです。これが、賃金が低く抑えられる主要な理由となっています。

なお、技能実習の登録支援機関については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【担当者必見】登録支援機関とは?特定技能制度における支援内容やメリット、選ぶ際のポイントを解説!
参考:令和4年賃金構造基本統計調査 (8) 在留資格区分別にみた賃金|厚生労働省

外国人労働者の賃金に関する3つの基本的なルール

次に、外国人労働者の賃金に関する基本的なルールについて解説します。

  • 最低賃金を下回らない
  • 同一労働同一賃金を遵守する
  • 労働基準法に基づいて割増賃金を支給する

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.最低賃金を下回らない

最低賃金は、労働者に対して支払われるべき最低限の賃金を指し、企業の経営者や人事担当者はこの基本的な概念の理解が不可欠です。

最低賃金についての具体的な規定は最低賃金法によって定められており、外国人労働者の雇用に関しても、国籍に関係なく最低賃金法の適用が求められます。

また、労働基準法第3条では、使用者が労働者の国籍や社会的身分を理由に賃金で差別をしてはならないと規定されています。

これにより、外国人労働者も最低賃金の保障を受けることが法律で保証されており、外国人労働者を雇用して給与を支払う場合、企業は最低賃金を下回ってはいけません。
参考:労働基準法(◆昭和22年04月07日法律第49号)|厚生労働省

2.同一労働同一賃金を遵守する

厚生労働省が策定した「同一労働同一賃金ガイドライン」は、正社員と非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の解消が目的です。この方針は、技能実習生を含む有期雇用労働者にも適用されています。

企業は、技能実習生やそのほかの外国人労働者が日本人労働者と同じ業務に就く場合、彼らにも同等の賃金を支払う義務があります。つまり、労働者の国籍や雇用形態に基づく不当な賃金設定は違反に該当するため注意してください。

また、まったく同じ業務でなくとも、同一レベルの業務や責任を担っている日本人と比較した場合に、かけ離れた賃金設定にならないように気をつける必要があります。
参考:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

3.労働基準法に基づいて割増賃金を支給する

外国人労働者に対する割増賃金の支払いは、労働基準法に基づき日本人労働者と同等に行われるべきです。時間外労働や休日労働に対する割増賃金はそれぞれ時間外労働で25%以上、深夜業(午後10時から午前5時までの労働)で25%以上、休日労働で35%以上の追加支払いが必要です。

とくに、技能実習生を対象とした場合、内職などの名目で不当に低い割増賃金を支払う行為は労働基準法に違反するとみなされます。また、入管法では技能実習生に対する内職の実施自体が認められておらず、これらの基準を守ることは企業が遵守すべき法的義務となっています。

外国人労働者を募集するための賃金設定のポイントは3つ

次に、外国人労働者を募集するための賃金設定のポイントについて解説します。

  • 同業他社の賃金より高い賃金を設定する
  • 福利厚生は詳細に記載する
  • 月収ベースで求人を紹介する

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.同業他社の賃金より高い賃金を設定する

出稼ぎを目的として日本に来る外国人労働者は、自身と家族の生活を支えるため、より高い収入を提供している企業を選びます。そのため、同業他社と比較して高い賃金設定は、優秀な外国人労働者を惹きつける有効な手段です。

コロナ禍を通じてオンライン面接が普及した影響で、求職者は地理的な制約なく全国の企業を比較検討できるようになりました。これにより、地方企業も大都市圏の企業と同等、あるいはそれ以上の賃金設定が求められています。

2.福利厚生は詳細に記載する

手当や社会保険の充実は、候補者が求人に対して感じる魅力を大きく左右します。とくに、外国人労働者のなかには家族を養う世帯主が多いため、住宅手当などの具体的な手当額を記載することで、彼らが入社後の生活を具体的にイメージしやすくなります。

また、韓国やベトナム、欧州諸国などでは退職金制度が国で定められているため、退職金支給を期待している外国人も少なくありません。そのため、退職金の支給有無を求人票に明記することが効果的です。

3.月収ベースで求人を紹介する

多くの外国人は、将来の年収よりも現在の月収を重視する傾向にあり、日本のように社会保障が整っている国と比べて、即時の収入がより重要視されています。そのため、月収ベースで明確に求人情報を提供することが、魅力的なオファーといえます。

とくに、社員寮を提供している企業は、寮費を含めた月給の提示に注意が必要です。「月給210,000円で社員寮月30,000円」といった形で基本給と控除内容を明確に分けて記載することで、後のトラブル回避につながります。

外国人労働者の賃金でよくある3つの質問

最後に、外国人労働者の賃金でよくある質問について解説します。

  • 質問1.外国人労働者への賃金支払い時の注意点とは?
  • 質問2.技能実習生を最低賃金で雇用した場合のリスクとは?
  • 質問3.外国人労働者の賃金はどのように決めるべき?

それぞれについて詳しくみていきましょう。

質問1.外国人労働者への賃金支払い時の注意点とは?

外国人労働者への賃金支払いでは、厚生年金や雇用保険、住民税、源泉所得税、40歳から60歳までの介護保険など、給与からの控除項目の明確な説明が重要です。

これらは日本人従業員と同様に適用されますが、外国人労働者にとっては馴染みのない制度もあるため、事前の詳細な説明が欠かせません。

説明不足や理解の不足は、手取り額に対する不満や不信感を引き起こし、結果としてトラブルの原因になるケースがあります。とくに、特定技能外国人労働者への説明では、彼らが理解しやすいよう母国語での情報提供を心がけましょう。

質問2.技能実習生を最低賃金で雇用した場合のリスクとは?

技能実習生を最低賃金で雇用した場合のリスクとしては、以下が挙げられます。

  • 技能実習生の失踪を誘発
    SNSを通じてほかの実習生と給与状況を比較し、給与格差による不満から、労働意欲が低下し、失踪する可能性が高まる
  • 好条件の他社への転職を誘発
    技能実習後の特定技能への在留資格変更により、育成した人材の流出につながりかねない
  • 最低賃金法・労働基準法違反を誘発
    最低賃金の更新に気づかず、法に違反するリスクがあり、罰金や受け入れ停止などの重大な結果を招く可能性がある

技能実習生の適正な賃金設定は、人材確保と法令遵守の観点で重要です。

質問3.外国人労働者の賃金はどのように決めるべき?

外国人労働者の賃金は、法律に基づいて適正に設定する必要があります。特定技能外国人に対しては、日本人と同等以上の報酬を担保することが求められます。

具体的な設定は、日本人の高卒者と同程度以上が目安とされ、技能実習生など技術を持たない労働者には最低賃金以上の報酬を支給するのがポイントです。

適正な賃金設定は、労働条件の公平性と法令順守の要件であり、透明性を保つことでトラブルを防ぎます。外国人労働者への賃金支払いは、法律を遵守し、適切な労働条件を提供するために重要です。

まとめ

この記事では、外国人労働者の平均賃金や在留資格ごとに賃金の差が生じている理由、賃金に関する基本的なルール、賃金設定のポイントについて解説しました。

外国人労働者の平均賃金は日本人よりも低い傾向にあり、在留資格区分によってその差は顕著です。

しかし、外国人労働者の雇用についても、国籍に関係なく最低賃金法の適用が求められます。

そのため、不当な賃金で外国人労働者を雇用することがないように注意してください。

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