受け入れる企業の規模などによって、技能実習生の受け入れ人数は変わります。また、受け入れる企業側はさまざまな要件をクリアしなければなりません。
本記事では、技能実習生の人数や割合、受け入れ人数枠や企業に求められる要件について解説します。また、よくある質問についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【項目別】技能実習生の人数や割合
項目別の技能実習生の人数や割合について解説します。
- 国籍
- 都道府県
- 職種
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.国籍
厚生労働省による令和5年10月末時点のデータによると、ベトナム出身者が209,305人ともっとも多い結果です。2000年代は、中国からの実習生が多数を占めていました。
しかし、中国の経済が発展するにつれ、ベトナムからの実習生が増加し、2015年には中国を上回りました。最近の数年間でベトナムは他国に比べて大きな差をつけていますが、ベトナムも経済発展を遂げています。
そのため、将来的にはインドネシアやフィリピン、ミャンマーなどの国々からの実習生が増える可能性があります。
参考:「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和5年10月末時点)|厚生労働省
2.都道府県
厚生労働省による令和5年10月末時点のデータによると、技能実習生を多く雇用しているのは、愛知県で38,887人です。続いて、東京都の27,065人、大阪府の 24,227人となっており、これらの地域が技能実習生の主要な受け入れ先となっています。
これらの結果から、特定の地域が外国人技能実習生の集中地となっているのは明らかです。経済活動が活発な地域や、製造業が盛んな地域では技能実習生の需要が高い傾向にあります。
参考:「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和5年10月末時点)|厚生労働省
3.職種
技能実習生が働くことができる職種は多岐にわたり、現在では7業種に加え、合わせて88職種です。これらの分類は、日本国内で労働力が必要とされる分野を反映しています。
令和5年10月末時点で、多くの技能実習生を受け入れている職種は建設関係の78,343人です。これに食品製造関係の68,542人、機械・金属関係が53,036人と続きます。
建設現場や食品加工、機械操作の分野では、手に職を求める技能実習生が集中しており、これらの業種での実習生数が多くなっています。
参考:職種・作業別 在留資格「技能実習」に係る在留者数|法務省
技能実習生の受け入れ人数枠とは?
技能実習制度では、受け入れ人数に上限が設定されており、受け入れ企業の規模に応じて決まります。企業が技能実習生を育成するためには、適切な指導体制を整えなくてはなりません。
そのため、企業は技能実習責任者の選任に加えて、技能実習指導員と生活指導員も配置することが義務付けられています。技能実習指導員は、実習の現場で指導を行うと同時に、実習生の安全確保にも責任を持つ役割です。
常勤職員数で受け入れ人数枠が決定する
「基本人数枠」と呼ばれる制度は、企業が1年間に受け入れが可能な実習生の最大数です。企業の規模に応じた適切な管理と支援が可能なレベルを保つために設けられています。
常勤職員が多い企業はより多くの実習生を受け入れることができ、実習生が質の高い指導を受けられる環境が整っています。この枠組みは実習生の教育と安全を確保し、技能実習生が日本での生活と労働経験を有意義なものにするために重要な役割です。
常勤職員の定義
外国人技能実習機構(OTIT)によれば、「常勤職員」とは、実習実施者に継続的に雇用されている職員を指し、正社員のみならず、正社員と同等の就業条件で働く日給月給者も含まれます。この定義により、企業は実際の雇用形態にかかわらず、一定の労働条件を満たす職員を常勤としてカウントできます。
ただし、技能実習生自体は常勤職員の計算には含まれません。これは技能実習生が主に学習と実践の機会を提供されている存在であるため、企業の常勤職員とは区別されるためです。
基本人数枠
以下の表のように、無理のない範囲で技能実習生を育成するため、技能実習生の受け入れ可能な人数枠は受け入れ企業の常勤職員数に応じて変わります。
常勤職員数(社会保険加入者数など) | 基本人数枠(技能実習生の受け入れ上限) |
301人以上 | 常勤職員数の1/20人 |
201人~300人 | 15人 |
101人~200人 | 10人 |
51人~100人 | 6人 |
51人~100人 | 5人 |
31人~40人 | 4人 |
30人以下 | 3人 |
優良な実習実施者の場合
「優良な実習実施者」の場合は、外国人技能実習機構から一定の基準をクリアしていることが認められており、技能実習2号から3号への移行も可能です。これにより、実習生は最大で5年間の技能実習を経験できます。
優良な実習実施者は、通常の受け入れ人数枠の2倍まで実習生を受け入れることが可能で、技能実習3号においては基本人数枠の3倍までの受け入れが許可されています。
技能実習1号=基本人数枠の2倍 | 技能実習2号 | |
常勤職員の人数 | 受け入れ可能人数 | 受け入れ可能人数 |
300人~ | 常勤職員の1/10 | 基本人数枠の4倍 |
201~300人 | 30人 | |
101~200人 | 20人 | |
51~100人 | 12人 | |
41~50人 | 10人 | |
31~40人 | 8人 | |
~30人 | 6人 |
実習生の受け入れ企業に求められる5つの要件
次に、実習生の受け入れ企業に求められる要件について解説します。
- 欠格事由に該当していない
- 技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員を配置する
- 技能実習生の住居を確保する
- 賃金を同業務の日本人と同額以上に設定する
- 社会保険に加入させる
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.欠格事由に該当していない
欠格事由は主に以下のカテゴリーに分類されます。
関係法律による刑罰を受けたことがある者
- 禁錮以上の刑に処せられた者
- 技能実習法やその他の出入国または労働に関する法律に違反し、罰金刑に処せられた者
- 暴力団関係法、刑法等に違反し、罰金刑に処せられた者
- 社会保険や労働保険の法律において、事業主としての義務に違反し、罰金刑に処せられた者
- いずれも刑の執行を終えた日または執行を受けることがなくなった日から5年以内の者
技能実習法による処分を受けたことがある者
- 技能実習計画の認定を取り消され、その取り消し日から5年を経過していない者
- 出入国または労働に関する法令で不正または著しく不当な行為をした者
行為能力や役員の適格性に問題がある者
- 行為能力に制限がある者
たとえば成年被後見人や被保佐人、破産手続き開始の決定を受けて復権を得ていない者
- 法人の役員や未成年の法定代理人で欠格事由に該当する者
暴力団排除の観点からの欠格事由
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者
- 暴力団員が事業活動を支配する者
これらの欠格事由に該当する企業は技能実習生の受け入れができません。
2.技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員を配置する
技能実習生を受け入れる企業には、厳格な要件が課されており、以下の3つの役割を配置しなければなりません。
- 技能実習責任者:実習全体の責任を担う
- 技能実習指導員:実習生の技能指導を担う
- 生活指導員:実習生の日常生活をサポートする役割を担う
さらに、申請者は過去5年間に人権侵害行為や文書の偽造・変造などをしていないことの証明が必要です。また、技能の習得に適した設備が整っていることも、受け入れ企業に求められる重要な条件です。
3.技能実習生の住居を確保する
住居は、実習生が日本での生活をはじめるうえで重要な基盤です。そのため、企業はアパートや戸建てを借り上げたり、自社の社宅を提供して実習生の居住環境を整えなければなりません。
法律では、住居における1人当たりのパーソナルスペースは最低4.5平方メートル以上であることが規定されています。さらに、実習生が快適に暮らせるように、生活インフラの整備や、寝具などの基本的な家具類の提供も不可欠です。
4.賃金を同業務の日本人と同額以上に設定する
実習生に支払われる賃金は、同業務である日本人労働者と同額以上でなければなりません。この要件は、実習生が公正な待遇を受けることを保証し、彼らの労働権を守るために不可欠です。
さらに、企業は実習生に対して適切な宿泊施設を提供し、入国後の適応期間中に必要な講習に専念できるように措置を講じる必要があります。また、食費や居住費など生活費の合意事項を技能実習計画に明記し、実習生が理解し、合意した旨を証明する書類の作成も重要です。
なお、外国人労働者の賃金については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:外国人労働者の平均賃金とは?在留資格ごとに賃金の差が生じている理由や基本的なルールを徹底解説!
5.社会保険に加入させる
実習生が日本で働く期間、日本人労働者と同等の保護を受けるために重要な要件の1つです。具体的には、健康保険や労災保険の加入が必須であり、これにより、実習生が病気や職場での事故に遭遇した際に、適切な医療サービスや補償を受けられます。
また、技能実習生は「外国人技能実習生総合保険」などの任意保険への加入が推奨されています。
技能実習生の受け入れにおける3つの課題
次に、技能実習生の受け入れにおける課題について解説します。
- 不法残留者数が多い
- 技能実習手続きの煩雑さ
- 企業側がハラスメントにおよぶ事例がある
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.不法残留者数が多い
出入国在留管理庁の令和5年7月時点のデータによると、外国人不法残留者の総数は79,101人で、技能実習による不法残留者は10,913人となっています。この数字は技能実習生制度における課題を浮き彫りにしています。
2004年に始まった不法滞在者削減計画により、不法残留者数は一時的に減少しましたが、再び増加傾向にあるのが現状です。
参考:本邦における不法残留者数について(令和5年7月1日現在)|出入国在留管理庁
2.技能実習手続きの煩雑さ
違反内容として報告されるケースが多いのは書類不備で、技能実習手続きの複雑さを示しています。実習生は、労働法で定められた賃金台帳や出勤簿の管理が必要です。
さらに、毎日の活動を詳細に記録する技能実習日誌や講習実施記録など、多岐にわたるドキュメントを整備しなければなりません。中小企業にとっては、これらの煩雑な書類作成が大きな負担となっています。
本来であれば、実習生との交流を深めたり、日本語教育に力を入れたりすることで、より実習生の成長を促すことが理想的です。したがって、手続きの簡素化はこの制度をより効果的かつ効率的に運用するために欠かせない懸案事項です。
3.企業側がハラスメントにおよぶ事例がある
2020年に、ベトナム出身の実習生が日本の監理団体の代表理事によって人権を侵害され、その代表理事が逮捕された事例があります。具体的には、実習生の外出時間を不当に制限する、外部の人々との接触を禁じるなどの人権侵害がありました。
このような事例の根幹には、実習生が自らの問題を声高に訴えることが困難な状況があるのかもしれません。しかし、彼らの立場の弱さを悪用する行為は、実習生が安全で健全な環境で働き、技能を学ぶことの本質的な目的に反します。
技能実習生の人数でよくある3つの質問
最後に、技能実習生の人数でよくある質問について紹介します。
- 質問1.技能実習生を受け入れる方法は?
- 質問2.初めて受け入れる場合の適正人数は?
- 質問3.優良認定を受ける方法は?
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.技能実習生を受け入れる方法は?
外国人技能実習生を受け入れる方法は、主に以下の2つです。
- 企業単独型
企業が海外の現地法人や取引先から職員を技能実習生として受け入れる方式。この方法は、企業がすべての管理とサポートを担う必要があるため、体制が整った大企業に適している
- 団体監理型
非営利の監理団体を通じて技能実習生を受け入れる方式。この方法は、監理団体が各種サポートを提供するため、中小企業にとって受け入れしやすいメリットがある
質問2.初めて受け入れる場合の適正人数は?
初めて技能実習生を受け入れる企業は、基本人数枠の最大人数を受け入れるのではなく、管理可能な範囲内で受け入れがおすすめです。初めての受け入れでは、事前の準備や実習生の育成、日本語コミュニケーションなど、多くの課題に直面します。
そのため、経験不足が原因でトラブルが生じるリスクを避けるために、受け入れる人数は慎重に選定しましょう。最初は少数から受け入れをはじめ、実習生の管理や支援がスムーズになれば、段階的に受け入れ人数を増やすのが望ましいです。
質問3.優良認定を受ける方法は?
優良認定を受けるためには、外国人技能実習機構が定める「優良な実習実施者の基準」をクリアしなければなりません。これには複数の評価項目があり、それぞれに点数が割り当てられています。
総点数は150点で、そのうち90点(60%)以上の獲得が優良認定の条件です。以下、評価項目の一例です。
技能等の修得に関する実績
過去3年間の技能実習事業年度における基礎級程度の技能検定の学科試験および実技試験の合格率
- 95%以上:20点
- 80%以上95%未満:10点
- 75%以上80%未満:0点
- 75%未満:-20点
これらの基準を満たすためには、技能検定で高い合格率を維持しつつ、法令を遵守した問題のない運営が不可欠です。また、実習生へのサポート体制を整え、技能獲得の効果的な支援も求められます。
参考:「優良な実習実施者及び優良な監理団体の基準について(参考)加点表」|外国人技能実習機構
まとめ
本記事では、技能実習生の人数や割合、受け入れ人数枠や企業に求められる要件について解説しました。
技能実習生を受け入れる企業の常勤職員数の人数により、受け入れ可能な人数の上限が決まっています。また、受け入れる企業は、技能実習責任者や技能実習指導員、生活指導員の配置や社会保険、賃金など要件を確実にクリアしなければなりません。
これらは、技能実習生が日本で必要な技能を習得するための基盤であり、働きやすい環境作りのために整備されなければならない要件です。
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