
育成就労制度とは、人材確保と育成を目的とした、従来の技能実習制度に代わる新しい外国人材の受け入れ制度です。
これまでの制度と異なり、労働者としての権利保護やキャリアアップがより重視されています。
これからの採用活動において、育成就労制度とはどのようなものか、不安を感じている担当者の方も多いはずです。
しかし、この制度は企業にとって優秀な人材を長期的に確保する大きな好機となります。
なぜなら、従来の「国際貢献」という建前から、「人材確保」へと目的が明確化され、即戦力となる特定技能への移行がスムーズになるからです。
厚生労働省の資料によれば、新制度は我が国の人手不足解消の切り札として期待されています。
この育成就労制度をうまく活用するために必要なステップは以下の通りです。
- ステップ①現在の受入体制と課題を分析する
- ステップ②就業規則やキャリアプランを策定する
- ステップ③信頼できる監理団体・支援機関を選ぶ
この記事では、制度の全容と企業がとるべき具体的な対応策について包括的に解説します。


育成就労制度に向けて人材定着を実現する3つのポイント
育成就労制度において企業が最も注力すべきは、「選ばれる企業」になることです。
新制度では「転籍(転職)」が可能になるため、労働条件や環境が悪い企業からは人材が流出してしまうリスクがあります。
ここでは、制度変更を好機と捉えて、優秀な外国人材に長く働いてもらうための重要なポイントを解説します。
ポイント①評価制度を整え賃金を適正化する
外国人の受け入れにおいて、明確で公平な評価制度の構築は急務です。
これまでの技能実習制度では最低賃金レベルでの雇用が散見されましたが、新制度では日本人と同等以上の報酬が厳格に求められます。
能力やスキルに応じた昇給基準を明確にすることで、本人のモチベーションを高めることが可能です。公正な評価は、より良い条件を求めて他社へ転籍するリスクを防ぐための最大の防御策となります。
なお、外国人労働者の平均賃金については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
関連記事:外国人労働者の平均賃金とは?在留資格ごとに賃金の差が生じている理由や基本的なルールを徹底解説!
ポイント②日本語教育を支援し定着率を高める
人材定着を高めるためには、業務に必要な日本語能力だけでなく、生活に必要な日本語力の向上を支援しましょう。
新制度では、特定技能へ移行する際に、日本語能力試験(JLPT)の要件が設けられる予定です。
企業が学習費用を補助したり、勉強時間を確保したりすることは、人材への投資となります。成長を支援してくれる企業に対して、労働者は帰属意識を持ちやすくなり、結果として定着率の向上につながります。
ポイント③特定技能への移行を見据えた計画を立てる
育成就労制度は、原則として3年間の就労を通じて「特定技能1号」への移行を目指す制度です。
このため、採用の段階から、3年後、5年後のキャリアパスを本人と一緒に描くことが重要です。
将来のビジョンを共有できれば、労働者は安心して業務に取り組めます。長期的な視点での育成計画は、企業にとっても将来の中核人材を育てることと同義です。

育成就労制度の導入に向けた3つのステップ
新制度の施行に向けて、企業は今から準備を進める必要があります。行き当たりばったりの対応ではなく、計画的に体制を整えることが成功のポイントです。
ここでは、スムーズな制度導入を実現するための具体的な手順を紹介します。
ステップ①現在の受入体制と課題を分析する
まずは、自社の現状を客観的に把握することから始めましょう。
既存の技能実習生がいる場合は、彼らの労働環境や満足度をヒアリングするのが有効な方法です。
「日本人社員とのコミュニケーションは円滑か」「宿舎の環境は適切か」などを洗い出します。課題の明確化により、新制度導入時に改善すべき優先順位が見えてきます。
ステップ②就業規則やキャリアプランを策定する
新制度に対応した就業規則の見直しを行いましょう。とくに、転籍に関する規定や、スキルアップに伴う昇給テーブルの整備は必須です。
また、どのようなスキルを身につければキャリアアップできるのかを可視化しましょう。
透明性のあるルール作りは、コンプライアンス遵守の観点からも、企業の信頼性を高める要素となります。
ステップ③信頼できる監理団体・支援機関を選ぶ
制度が複雑化するため、サポートを行う監理団体(新制度では「監理支援機関」となる予定)の選定は極めて重要です。
法改正の情報を正確に把握し、適切なアドバイスができるパートナーを選びましょう。
単なる手続きの代行だけでなく、トラブル時の対応力や教育支援のノウハウを持っているかを確認してください。良いパートナーとの連携は、企業の負担を大幅に軽減します。
なお、「監理団体」の役割や選ぶ際のポイントについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
関連記事:技能実習生の受け入れで知っておくべき「監理団体」とは?役割や選ぶ際のポイントをご紹介! – 株式会社 グローバルヒューマニー・テック

従来の技能実習制度との主な3つの違い
育成就労制度は、技能実習制度の課題を解消するために設計されました。ここでは、検索ニーズの高い「何が変わるのか」という点について、決定的な違いを解説します。これまでの制度との違いを理解できれば、新制度の目的がより鮮明になります。
違い①目的が国際貢献から人材確保へ変わる
最大の違いは、制度の目的が抜本的に変更されたことです。
技能実習制度は「開発途上国への技能移転(国際貢献)」が目的でしたが、実態は安価な労働力の確保となっていました。
育成就労制度では、正面から「人材の確保と育成」を目的として掲げています。
これにより、企業は労働力として期待していることを公言でき、実態に即した運用が可能になります。
違い②一定の条件で本人意向の転籍が可能になる
これまで原則禁止されていた「転籍(職場を変えること)」が、条件付きで認められます。
具体的には、同一の業務区分であり、かつ一定期間(1〜2年)就労していることなどが要件となる見込みです。
これは労働者の権利を守るための措置ですが、企業にとっては人材流出のリスクでもあります。だからこそ、前述したような「選ばれるための努力」が企業に求められるのです。
違い③特定技能への移行がスムーズになる
新制度は、特定技能制度への接続を前提としています。技能実習では、職種や作業の不一致により特定技能への移行がスムーズにいかないケースがありました。
育成就労制度では、特定技能の産業分野と分野を一致させることで、シームレスな移行を実現します。これにより、企業は育成した人材を、最長5年(特定技能1号)またはそれ以上(特定技能2号)雇用し続ける道が拓けます。
参考:育成就労制度の概要|厚生労働省

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「育成就労制度とは」でよくある3つの質問
制度の導入にあたって、多くの企業担当者が抱く疑問をまとめました。不安を解消し、前向きに検討を進めるための材料としてください。
質問①新制度はいつから開始されますか?
改正法は2024年6月に成立しました。
公布から3年以内の施行とされており、一般的には2027年(令和9年)頃までの開始が見込まれています。
◆厚生労働省が発表している施工までのスケジュール

準備期間として、今のうちから情報収集と社内体制の整備を進めておくことを強くおすすめします。改正法施行の直前になって慌てないよう、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
質問②現在雇用している技能実習生はどうなりますか?
新制度開始後も、一定の経過措置期間が設けられる予定です。
現在在留している技能実習生は、在留期間が満了するまで、または特定技能へ移行するまで、引き続き就労が可能です。
ただし、新規の受け入れは育成就労制度へ切り替わっていきます。具体的な移行スケジュールについては、政府の発表を注視する必要があります。
質問③受け入れにかかる費用は変わりますか?
新制度では、監理団体や送り出し機関の透明化が図られるため、費用構造が変わる可能性があります。
とくに、外国人材が送り出し機関に支払う手数料の負担を減らすため、受入企業と費用を分担する仕組みなどが議論されています。
初期費用が増える可能性はありますが、その分、質の高い人材を確保しやすくなると考えられます。コストではなく「投資」と捉え、長期的なリターンで判断するようにしてください。

育成就労制度を理解して選ばれる企業になろう!
育成就労制度は、日本の労働市場における大きな転換点です。
制度変更を単なるルールの変更と捉えるのではなく、自社の採用力と組織力を高めるチャンスに変えていきましょう。
最後に、今回紹介した導入のステップを振り返ります。
- ステップ①現在の受入体制と課題を分析する
- ステップ②就業規則やキャリアプランを策定する
- ステップ③信頼できる監理団体・支援機関を選ぶ
外国人材にとって魅力的な職場環境を作ることは、結果として日本人社員にとっても働きやすい環境につながります。多様な人材が活躍する強い組織を作るために、今すぐ準備を始めましょう。
なお、株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、グローバル人材に対する総合的な生活支援を実施しており、外国人の受け入れにおける豊富な経験と知識を有しています。ご相談・お見積りはもちろん無料です。まずはお気軽にお問合せください。⇒株式会社グローバルヒューマニー・テックに相談する



