特定技能「飲食料品製造業」とは?需要が高まっている要因や特定技能外国人を採用する要件について徹底解説!

食料品製造業に従事する方で、特定技能外国人の受け入れを検討している方もおられるのではないでしょうか。特定技能外国人を雇用する場合は、受け入れの要件や流れを理解しておく必要があります。

本記事では、特定技能「飲食料品製造業」の概要や特定技能が許可された背景、需要が高まっている要因について解説します。また、特定技能外国人を受け入れる要件や流れについても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

編集部

特定技能「飲食料品製造業」とは?

 特定技能「飲食料品製造業」の概要や業務内容について解説します。それぞれについて詳しくみていきましょう。

概要

特定技能「飲食料品製造業」は、特定技能の分野の1つで、酒類を除く飲食料品の製造や加工など、飲食料品を製造する過程全般に従事する外国人のための在留資格です。

この分野は、特定技能のなかで最も多くの受け入れ人数を誇り、深刻化している飲食料品製造業の労働力不足を解消する手段として、特定技能外国人の採用が注目されています。

業務内容

特定技能「飲食料品製造業」における業務内容は多岐にわたります。この分野での業務は、主に以下の7つの業態に分けられます。

  • 食料品製造業
  • 清涼飲料製造業
  • 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
  • 製氷業
  • 菓子小売業(製造小売)
  • パン小売業(製造小売)
  • 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業

また、食料品製造業の内訳は以下のとおりです。

  • 畜産食料品製造業
  • 水産食料品製造業
  • 野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業
  • 調味料製造業
  • 糖類製造業
  • 精穀・製粉業
  • パン・菓子製造業
  • 動植物油脂製造業
  • その他の食料品製造業(でんぷん、めん類、豆腐・油揚げ、あん類、冷凍調理食品、惣菜、すし・弁当・調理パン、レトルト食品等)

スーパーでのお惣菜の調理や加工は一般的に「小売業」の一機能とみなされ、「飲食料品製造業」の対象外です。

ただし、独立した店舗が調理や加工を実施する場合や、スーパーの売上の過半数以上がバックヤードで製造・加工された飲食料品による場合は、特定技能「飲食料品製造業」の対象になります。
参考:飲食料品製造業分野・外食業分野における特定技能外国人受入れの制度について|農林水産省

飲食料品製造分野において特定技能が許可された背景

次に、飲食料品製造分野において特定技能が許可された背景について解説します。

  • 有効求人倍率が高い
  • 海外に工場を移転しにくい
  • 機械化が難しい作業がある

それぞれについて詳しくみていきましょう。

有効求人倍率が高い

有効求人倍率が高い

2017年のデータによると、全産業平均の有効求人倍率が1.54倍であるのに対して、飲食料品製造業では2.78倍と約2倍の数値です。これは、求職者1人あたりに平均して約3社からオファーがあることを意味しており、極めて高い競争率を示しています。

日本国内での労働力市場の動向として、多くの日本人労働者が第三次産業での就業を望む傾向が強まっていることもあり、飲食料品製造業においては、高い待遇を提示してもなお人手不足に陥る状況が続いています。

このような背景から、外国人労働者を積極的に受け入れるための特定技能ビザの制度が飲食料品製造業分野においても許可されました。
参考:飲食料品製造業分野における外国人材受入れ拡大について|農林水産省

海外に工場を移転しにくい

飲食料品の製造は、原料の品質や鮮度が重要であり、地域特有の味わいを再現するためには、その土地固有の環境や技術が不可欠です。さらに、食文化の違いによる消費者の好みの違いや、輸送コストの増加、衛生管理や品質保持の課題など、海外移転には多くの困難が伴います。

これらの理由から、飲食料品製造業界では国内での生産を継続しつつ、特定技能労働者を積極的に受け入れて人手不足を補い、産業の持続可能性を図る動きが加速しています。

機械化が難しい作業がある

飲食料品製造企業の多くがIoTやAI、FA技術を利用して省人化を進めています。しかし、クリスマスケーキや季節のお弁当など、特定の時期にのみ生産される製品に対応する自動製造機械を導入するのは現実的ではありません。

そのため、柔軟に対応できる人力の方がコスト効率の面で優れています。さらに、細かい加工や不良品の選別など、技術的に自動化が難しい作業も存在しているため、特定技能での労働力が期待されています。

特定技能「飲食料品製造業」の需要が高まっている要因

次に、特定技能「飲食料品製造業」の需要が高まっている要因について解説します。

  • 技能実習からの移行が増えている
  • 6次産業化への移行

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.技能実習からの移行が増えている

新型コロナウイルス感染症の拡大が要因となり、技能実習終了後も帰国できない状況にある多くの外国人が在留資格を特定技能に切り替えて、日本での就業を選択しています。

また、技能実習生を受け入れていた企業側でも、新規の技能実習生の受け入れが困難になったため、研修中の技能実習生の在留資格を特定技能に切り替え、そのまま働いてもらいたいという需要が増加しました。

2.6次産業化への移行

農林漁業や工業、そして商業を融合し、生産者が加工や流通まで実施できるようにする「6次産業化」が加速しています。この多角化により、加工や販売を含む広範な業務をこなせる人材が求められるようになりました。

結果として、農業事業者の間で外国人材の採用が活発化しており、特定技能「飲食料品製造業」の人材が注目されています。

特定技能1号「飲食料品製造」を取得する方法

次に、特定技能1号「飲食料品製造」を取得する方法について解説します。

  • 技能試験および日本語試験に合格する
  • 飲食料品製造業分野の2号技能実習を修了する

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.技能試験および日本語試験に合格する

日本で就業したい外国人が特定技能「飲食料品製造業」1号を取得するためには、以下の試験への合格が必要です。

  • 「飲食料品製造業 特定技能1号技能測定試験」に合格する

日本の飲食料品製造業で求められる技能水準を測るための試験。衛生管理や労働安全衛生の知識などを問う学科試験と判断試験、計画立案を含む実技試験で構成されており、合格基準は満点の65%以上が必要となる

  • 「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に合格

日本での就業や生活に必要な日本語能力を測るもので、国際交流基金日本語基礎テストは年6回、日本語能力試験は年2回実施されている

2.飲食料品製造業分野の2号技能実習を修了する

特定技能1号「飲食料品製造」の資格を取得する方法の1つに、飲食料品製造業分野の2号または3号技能実習を修了する方法があります。技能実習を終え、その過程で習得した技能が新たに従事する予定の業務と密接に関連していると判断された場合、特定技能1号への移行が可能です。

このルートを選ぶと、通常必要とされる技能試験や日本語能力の試験を受ける必要がありません。つまり、技能実習生がその経験とスキルを活かし、飲食料品製造業でさらに専門的な職に就く道が開かれます。

この制度は、すでに日本での実務経験を積み、必要な技能と知識を有している外国人労働者がより専門性の高い仕事にスムーズに移行できるように設けられています。

特定技能「飲食料品製造業」で外国人を採用するための要件

次に、特定技能「飲食料品製造業」で外国人を採用するための要件について解説します。

  • 「受け入れ要件」を満たす
  • 支援体制を構築する

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.「受け入れ要件」を満たす

飲食料品製造業分野で外国人を特定技能として採用するためには、農林水産省が定める一定の受け入れ要件を満たす必要があります。具体的な条件は以下のとおりです。

  • 受け入れ企業または団体は、「食品産業特定技能協議会」の構成員となる

外国人材の受け入れから4か月以内に実施する必要がある。この協議会は、特定技能「飲食料品製造業」の適正な運用を図るための組織であり、加盟によって制度の適切な利用が促される

  • 食品産業特定技能協議会の活動に対し、必要な協力を提供する

「食品産業特定技能協議会」への加盟後は、情報の共有や法規制の遵守に関する啓発活動、地域の労働市場の状況調査を実施する同協会の活動に協力する義務が生じる

  • 農林水産省が主導する調査などへの協力

農林水産省が主体となって実施される調査などについて、協力が求められるケースがある

これらの要件を満たすことで、飲食料品製造業における特定技能外国人の採用が可能となります。

2.支援体制を構築する

支援体制には、入国前の事前ガイダンスや出入国時の送迎サービス、日本語教育、さらには相談や苦情への対応が含まれます。これらの支援活動を、企業や団体は自ら実施するか、専門の外部機関へ委託して実施しなければなりません。

とくに、過去2年間で外国人の受け入れ実績がない、または独自での支援体制構築が難しい場合は、これらのサポート業務を「登録支援機関」に委託することが義務付けられています。

特定技能外国人を受け入れるまでの流れ

次に、特定技能外国人を受け入れるまでの流れについて解説します。

  • ステップ1.人材募集・面接
  • ステップ2.雇用契約を結ぶ
  • ステップ3.支援計画の策定
  • ステップ4.在留資格申請の実施

それぞれについて詳しくみていきましょう。

ステップ1.人材募集・面接

特定技能外国人を受け入れる際は、受け入れ要件を満たしているかの確認から始め、必要な人材を募集するステップに進みます。募集対象は日本国内に居住している外国人と海外に居住している外国人の2つです。

募集方法には、求人広告の掲載や人材紹介会社を通じた方法などがあり、応募者の資格や経験を精査するための書類選考が必要です。その後、面接を通じて候補者の技能水準や日本での生活適応能力を評価します。

ステップ2.雇用契約を結ぶ

人材の採用が決まったら、次は雇用契約を結びます。特定技能外国人を受け入れる際の雇用契約締結においては、法律で定められた以下の基準を満たさなければなりません。

  • 業務内容が特定技能外国人が従事する業務に該当する
  • 所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間と同じである
  • 報酬額が日本人と同等以上である
  • 外国人であることを理由にした差別的な待遇をしない
  • 一時帰国を希望した際は休暇を取得させる
  • 労働者派遣の対象とする場合は、派遣先や派遣期間が定められている(派遣形態での雇用は農業分野と漁業分野でのみ可能)
  • 外国人が帰国の旅費を負担できないときは、受け入れ機関が負担する
  • 契約終了後の出国が円滑に進むようにサポートする
  • 外国人の健康状態や生活状況を把握する
  • 分野に特有の基準に適合する(※分野所管省庁の定める告示で規定)

これらの基準に注意して、雇用契約書を作成しましょう。

ステップ3.支援計画の策定

特定技能外国人が職業生活や日常生活、そして社会生活を安定的かつ円滑に送れるよう支援するための支援計画の策定が必要です。この支援計画は、法務省が提供する「特定技能ガイドブック」に準じた形で作成され、企業にはこの計画に基づく支援義務が課されます。

支援計画には、住居や日本語の学習機会の提供、社会保険への加入手続き、緊急時の対応方法の説明など、外国人労働者が新しい環境に適応するために必要なさまざまな項目が含まれます。

企業が自ら支援計画の策定や実施に困難を感じる場合、専門知識を持つ登録支援機関にこれらの業務を委託するのもおすすめです。
参考:特定技能 ガイドブック|法務省

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ステップ4.在留資格申請の実施

海外からの新規雇用には在留資格の新規申請が必要です。一方、日本国内で留学生や技能実習生として滞在している外国人は、在留資格の変更申請が必要になります。

申請にあたっては、外国人労働者個人や受け入れ企業の情報、さらにその企業の業種や従事する分野に関連する書類の準備が必要です。この申請により、外国人が特定技能外国人として正式に日本で働くための法的な資格が得られます。

特定技能「飲食料品製造業」でよくある3つの質問

最後に、特定技能「飲食料品製造業」でよくある質問を紹介します。

  • 質問1.特定技能外国人を採用した場合の報酬は?
  • 質問2.技能実習との違いは?
  • 質問3.HACCPに沿った衛生管理の知識・技能とは?

それぞれについて詳しくみていきましょう。

質問1.特定技能外国人を採用した場合の報酬は?

特定技能外国人を採用した場合、報酬は日本人労働者と同等以上でなければなりません。もちろん、能力に基づいた報酬の調整は可能ですが、外国人であるという理由で報酬を低く設定することは認められていないのです。

雇用する前に、受け入れ企業は「特定技能外国人の報酬額が日本人の報酬と同等以上であること」を明記した説明文書を作成し、これを外国人労働者に提示する義務があります。

日本人と同等という基準は、具体的には日本人労働者に適用される賃金規定に沿って報酬設定することを意味します。賃金規定が存在しない場合や、日本人が働いていない職場では、その地域で同様の業種における報酬が基準です。
関連記事:外国人労働者の平均賃金とは?在留資格ごとに賃金の差が生じている理由や基本的なルールを徹底解説!

質問2.技能実習との違いは?

技能実習と特定技能制度の違いは、主に業務の範囲の広さです。技能実習は比較的狭い範囲の業務に限定されており、繁忙期などに異なる業務を担当させるのが難しい場合があります。

一方、特定技能では単純労働を含むより幅広い業務を行うことが可能です。ただし、分野を超えた業務は許可されていません。近年は、国内に居住する技能実習生が特定技能への在留資格を移行するケースが増えています。
関連記事:【2024年最新版】特定技能と技能実習の違いは10項目|それぞれに向く企業の特徴も徹底解説! – 株式会社 グローバルヒューマニー・テック

質問3.HACCPに沿った衛生管理の知識・技能とは?

2021年6月1日から、飲食業界や飲食料品製造業界ではHACCPに基づく衛生管理が原則として義務付けられました。HACCPは、食品の安全性を確保するために重要な管理点を特定し、それらを制御することに焦点を当てた衛生管理の手法です。

食品製造過程における危害(Hazard)、分析(Analysis)、管理(Control)、重要(Critical)、点(Point)の5つの要素で構成されいます。特定技能「飲食料品製造業」の資格を持って日本で働く外国人労働者には、HACCPに沿った衛生管理を理解し、実践するための具体的な知識と技能が求められます。

まとめ

本記事では、特定技能「飲食料品製造業」の概要や特定技能が許可された背景、需要が高まっている要因、特定技能外国人を受け入れる要件や流れについて解説しました。

特定技能「飲食料品製造業」は、酒類を除く飲食料品の製造や加工など、飲食料品の製造に従事する外国人のための在留資格です。取得するには、技能試験および日本語試験に合格するか飲食料品製造業分野の2号技能実習を修了する必要があります。

企業として受け入れる場合は、受け入れの要件を確認し、支援体制の構築が求められます。初めて特定技能外国人を受け入れる企業は、専門知識が豊富な登録支援機関に委託するのもおすすめです。

株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、グローバル人材に対する総合的な生活支援を実施しており、特定技能外国人の受入れにおける豊富な経験と知識を有しています。
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