人材不足を補う方法として、外国人労働者を雇用する企業が増加傾向にあります。そのなかでも、ミャンマー人の雇用を検討している企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、ミャンマーの基本情報や日本で働く労働者数、国民性や文化の特徴について解説します。また、ミャンマー人を雇用するメリットや注意点についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ミャンマーの基本情報
ミャンマー連邦共和国は東南アジアのインドシナ半島西部に位置し、中国やインド、バングラデシュ、タイに囲まれた国です。国土は縦に長く、日本の約2倍の広さを有しています。
また、1948年にイギリスから独立し、1989年まではビルマ連邦と呼ばれていました。現在の首都はネーピードーであり、かつての首都ヤンゴンから移転しています。
しかし、ヤンゴンは外資系企業や民間企業が集まる商業の中心地であり、国内で最も活気ある都市のひとつであるため、いまだにミャンマーの首都はヤンゴンであるというイメージが強くなっています。
ミャンマーの情勢
ミャンマーは、かつて大統領を元首とする共和制でしたが、2021年のクーデターにより、軍が政権を握り、国家行政評議会議長が実質的な国家指導者になりました。
この政変は、ビジネス環境や市民の日常生活に深刻な影響をおよぼしています。多くの外資系企業は事業継続が困難となり、ミャンマーから撤退せざるを得なくなりました。また、国内の雇用環境も厳しく、若者たちの間での離職率が顕著に上昇しています。
日本で働くミャンマー人の労働者数
2023年10月末時点で、ミャンマーからの労働者数は71,000人を超え、その増加率は前年比で49.9%です。これは、ミャンマー国内の政情不安が一因となっていると考えられます。
多くのミャンマー人労働者は「技能実習生」として日本で働いていますが、この制度は国際社会からの批判を受け、制度の見直しが強化されています。日本での雇用環境が改善し、より透明で公正な技能実習制度が整備されれば、ミャンマーからの労働者数はさらに増加する可能性が高いです。
参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)|厚生労働省
ミャンマー人の国民性や文化の特徴は5つ
次に、ミャンマー人の国民性や文化の特徴について解説します。
- 温和で思いやりがある
- 叱られることに慣れていない
- 親日国家である
- 挨拶の習慣がない
- 目上の人を敬う
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.温和で思いやりがある
多くのミャンマー人が仏教徒であることから、ミャンマー人の文化や日常生活には仏教の教えが色濃く反映されています。徳を積むことの重要性や、怒りを避ける美徳は、ミャンマー人の行動規範として広く受け入れられています。
また、人との関わりにおいても非常に穏やかで、相手の気持ちを尊重する人が多い傾向です。さらに、家族や友人への深い愛情や敬意も特徴の1つです。
2.叱られることに慣れていない
ミャンマー人は叱られる状況に馴染みが薄く、職場で厳しい叱責を受けると深く傷つく傾向にあります。ミャンマーの文化では、親や教師以外の人が叱るケースは珍しく、対話や優しい指摘が好まれます。
そのため、ミャンマー人に何か間違いがあった場合は、個別に寛容な態度で接するのが効果的です。東南アジアの多くの国々と同様に、おおやけの場での叱責に対しても非常に敏感です。
3.親日国家である
第二次世界大戦時代の経緯から、日本に対する肯定的な感情が多くのミャンマー人に根付いています。昨今では、日本で働くミャンマー人の数が増加しており、この傾向が双方の国民間の絆を強化しています。
さらに、日本の漫画やアニメなどのコンテンツがミャンマー国内で広く受け入れられている点も、両国民間の文化的な親和性を高めているのかもしれません。
4.挨拶の習慣がない
ミャンマー語には明確な挨拶の言葉が存在しないため、ミャンマー人は挨拶する機会が少ないと言われています。このため、日本に来たミャンマー人が挨拶を躊躇するのは、不慣れさによるものであり、無礼な意味合いではありません。
ミャンマー人が日本で生活を始める際には、挨拶の習慣について学べる場を提供することが日本の文化に適応する一助になります。
5.目上の人を敬う
ミャンマーでは、親の意見が最優先される傾向にあります。ミャンマー人を雇用する際は、仕事と家族の優先順位について事前に理解を深めておきましょう。
また、目上の人を敬う態度は、ミャンマーの仏教的価値観と密接に関連しており、社会生活のあらゆる場面でその傾向がみられます。食事の際には、目上の人が最初に食べ始めるのを待つのが一般的で、このような習慣も敬意を表現する行動の1つです。
ミャンマー人の給与水準
ミャンマー人の平均的な給与水準としては、月収が約3万円です。また、ミャンマーでは、年収という概念はあまり一般的ではなく、多くの労働者は月単位での収入を基準に生計を立てています。
士業や金融業界など、一部の職種では比較的収入が高い傾向にありますが、全体としては貯金が難しい経済状況です。そのため、よりよい収入を求めて海外で働く人や、外資系企業への就職を目指す人が増加しています。
なお、外国人労働者の賃金については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:外国人労働者の平均賃金とは?在留資格ごとに賃金の差が生じている理由や基本的なルールを徹底解説!- 株式会社 グローバルヒューマニー・テック
ミャンマー人を雇用する3つのメリット
次に、ミャンマー人を雇用するメリットについて解説しています。
- 勤勉で真面目
- 若い人材が豊富
- 日本語の上達が早い
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.勤勉で真面目
ミャンマー人の多くは、日本人と共通する勤勉さを持ち合わせており、与えられたタスクに対して責任を持ち、期限や納期を厳守します。また、仕事を丁寧にこなすだけでなく、チーム内でのコミュニケーションも大切にし、円滑な職場環境を築くことに貢献します。
ミャンマー人の穏やかな性格は、職場での口論や衝突などのリスクを避けやすいため、人間関係を大切にする企業にとっては大きなプラスの要素です。
2.若い人材が豊富
若いミャンマー人労働者は、新しい環境に適応する柔軟性と長期的に企業に貢献するポテンシャルを持っています。人手不足に直面している日本の企業にとっては、これらは大きなメリットです。
日本の企業は若くエネルギッシュな人材を求めているため、ミャンマーは豊富な労働力を提供する貴重な源泉となり得ます。ミャンマーからの労働者は、将来的にも増え続けると予想されており、ミャンマー人の雇用が日本企業の長期的な成長と発展につながると考えられています。
3.日本語の上達が早い
ミャンマー語も日本語と同じく、SOV型(主語、目的語、動詞)の文法構造であり、これは英語や中国語のSVO型(主語、動詞、目的語)とは異なります。
そのため、ミャンマー人は日本語の文法構造に適応しやすく、言語の習得が比較的容易です。さらに、ミャンマー語は発音の種類が豊富であり、そのなかには日本語に似た音も含まれているため、発音を比較的流暢に習得できます。
ミャンマー人を雇用する際の注意点は3つ
次に、ミャンマー人を雇用する際の注意点について解説します。
- 特定技能で認められている機関に限りがある
- 採用にさまざまな費用がかかる
- 海外労働許可証が必要になる
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.特定技能で認められている機関に限りがある
ミャンマーの送り出し機関のすべてが特定技能に対応しているわけではありません。そのため、日本でミャンマー人を雇用しようと考えている企業は、事前に日本政府や関連行政機関が発行する正確なリストや資料を確認し、適切な機関を選ぶ必要があります。
この確認作業を怠ると、後々の手続きにおいて問題が発生する可能性があり、円滑な雇用プロセスに支障をきたす原因になりかねません。
なお、特定技能の登録支援機関については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【担当者必見】登録支援機関とは?特定技能制度における支援内容やメリット、選ぶ際のポイントを解説! – 株式会社 グローバルヒューマニー・テック
2.採用にさまざまな費用がかかる
採用費用には、候補者の教育や訓練費、渡航費、受け入れ機関への手数料などが含まれます。特定技能労働者のための日本語教育や専門的な訓練にかかる費用は、多くの場合、雇用企業が負担しなければなりません。
また、ミャンマーから日本への渡航費も企業側が支払うことで、応募者の負担が軽減され、より多くの応募を促す結果につながります。
3.海外労働許可証が必要になる
スマートカードと呼ばれる「海外労働許可証(OWIC)」は、ミャンマー人が海外で働くために必要です。発行プロセスには最大で半年程度の時間がかかるケースがあります。
ここで重要なのは、日本での在留資格認定証明書の有効期限が3ヶ月である点です。この期限内にスマートカードが発行されない場合、ミャンマー人労働者は日本での就労が困難となります。
そのため、雇用予定のミャンマー人労働者がスムーズに日本で働けるよう、採用プロセスの初期段階でこの許可証の申請を実施するなど、適切な計画が不可欠です。
ミャンマー人の特徴でよくある3つの質問
最後に、ミャンマー人の特徴でよくある質問を紹介します。
- 質問1.ミャンマー人に避けるべき行動は?
- 質問2.ミャンマーの主要な産業は?
- 質問3.ミャンマー人を雇用する方法は?
それぞれについて詳しくみていきましょう。
質問1.ミャンマー人に避けるべき行動は?
ミャンマー人とのコミュニケーションでは、叱責や怒りの表現を避けるべきです。ミャンマー人は、厳しい叱責に対して敏感であり、非常にストレスフルな経験になります。
とくに、間違いやミスを犯した際には、おおやけの場での厳しい注意は避け、プライベートな空間で穏やかに事実を伝え、改善のためのアドバイスをすることが大切です。実際、日本で働くミャンマー人労働者からは、ミスに対して寛容に接してもらえたことに対する感謝の声が聞かれます。
質問2.ミャンマーの主要な産業は?
ミャンマーの主要産業は多岐にわたりますが、主な産業としては以下のとおりです。
- 農業
経済の中心的な産業の1つで人口の70%が農業に従事している。米や胡麻、豆類などの栽培、輸出が盛んに行われている
- 鉱業
ヒスイやルビー、サファイアなどの貴重な鉱石の産出地であり、鉱石の採掘と加工が重要な産業の1つを担っている
- エネルギー産業
石油・ガス採掘と発電が主要活動とされており、再生可能エネルギーへの投資も増加している
- 製造業
軽工業と食品加工が中心で衣料品や靴、家具、食品の生産や輸出をしている
- 観光業
自然景観と歴史的遺産が多く、観光が収入源の1つであり、バガン遺跡やシュエダゴンパゴダが有名な観光地になっている
- 金融・サービス業
金融セクターとサービス業も成長しており、銀行業や通信業が発展している。また、外資の流入も拡大している
質問3.ミャンマー人を雇用する方法は?
ミャンマー人を企業で雇用するには、以下の方法があります。
- 特定技能の在留資格を利用する
国内での人材確保が難しい分野で幅広い業務が可能。さらに、特定技能2号で在留期間の上限撤廃や長期就業が可能になる
- 現地エージェントとの契約
ミャンマーのエージェントと契約し、特定技能の在留資格を取得させて、来日してもらう方法がある
まとめ
本記事では、ミャンマーの基本情報や日本で働く労働者数、国民性や文化の特徴、ミャンマー人を雇用するメリットや注意点について解説しました。
2023年10月末時点で、ミャンマーからの労働者数は71,000人を超えており、今後も増加が見込まれています。ミャンマーは、親日国家であり、温和で思いやりのある国民性の方が多い傾向です。
そのため、仕事においても勤勉でまじめに働く人が多く、若い優秀な人材を雇用できる可能性があります。さらに、言語においても日本と文法構造が似ているため、日本語の習得が早く、コミュニケーションが取りやすい点がメリットです。
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