国内による人材不足の影響で、外国人労働者の数が増加傾向にあります。外国人労働者を採用するには、法的な手続きや文化的な違い、適切なコミュニケーション方法など、さまざまなポイントを理解しておかなければなりません。
本記事では、外国人採用における注意点や採用動向、メリット・デメリット、採用ステップをご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
外国人採用の動向
厚生労働省の報告によると、令和5年時点で外国人労働者の数が過去最高を更新して、200万人を超えました。この増加の背景には、国内による人材不足の影響が大きいです。
多くの企業が、日本人のみを対象とした求人では十分な応募者を得られず、結果として外国人材の採用に踏み切るケースが増えています。たとえば、飲食業や宿泊業などのサービス業では、この傾向が顕著です。
参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)|厚生労働省
外国人採用のメリット・デメリット
次は、外国人採用のメリット・デメリットについて解説します。
- メリット
- デメリット
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
メリット
外国人採用のメリットは、以下のとおりです。
- 人材不足の解消
少子高齢化による国内での採用が難しい状況において、外国人は優秀な人材の供給源として貴重な存在になっている
- コスト削減
外国人雇用には助成金や支援制度が活用できるため、大幅に採用コストの軽減が期待できる
- 多言語対応
外国人従業員を採用すれば、海外顧客に対するサービスの質が向上して、顧客満足度を高められる
- 海外市場への展開
外国人材の知識を活用すれば、数年単位で海外展開をスムーズに進めやすくなる
- 企業イメージの向上
多様な文化を受け入れる企業としての姿勢は、ブランド力の向上にもつながる。また、異なる文化や価値観を持つ従業員がいるため、創造力が促進される
なお、外国人労働者を受け入れるメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:外国人労働者を受け入れる5つのメリット|受け入れに関する現状や問題点、注意点まで詳しく解説します!
デメリット
外国人採用のデメリットは、以下のとおりです。
- 文化や習慣が異なる
文化や価値観の違いによる影響で、職場内で対立が生じやすくなる。互いに理解を深める努力が欠かせない
- コミュニケーションの難しさ
言語の壁によって意思疎通が難しい場合があり、効果的なサポートが求められる
- 採用手続きの複雑さ
外国人を採用する際は、就労ビザの取得や在留資格の確認、就労ルールの理解が必要で、手続きに時間がかかる
- 研修の調整
外国人向けの研修内容を文化や言語の違いに対応する必要がある。たとえば、理解しやすい日本語表現、日本文化の理解を促進する内容などが求められる
- 法規制の変更への対応
外国人雇用に関連する法律や規制の変更に対応するため、法務部と人事部門などの関連部署との連携が必須になる
外国人採用における注意点は7つ
次は、外国人採用における注意点について解説します。それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.雇用できる外国人か確認する
在留カードを所持しているか、その在留資格が就労可能かを確認しましょう。在留資格には29種類あり、就労可能な資格を持っているかで、採用の可否を決定してください。
また、在留期限が切れていないか、業務内容が資格範囲内であるかも確認しなければなりません。これらを怠ると、不法就労の助長につながり企業に罰則が科される可能性もあります。
2.日本人と同じ労働条件で募集する
労働基準法や最低賃金法は、国籍を問わずすべての労働者に平等に適用されるため、賃金や待遇に差をつけてはなりません。たとえば、外国人に対して日本人よりも低い賃金を支払ったり、有給休暇を少なく設定したりすると、法律違反となる可能性があります。
一方で、職務上の能力に沿った賃金の差異や、在留資格の規定にもとづく労働時間の短縮など、合理的な差異は許容される場合もあります。
3.価値観や文化の違いを理解する
日本と他国では、宗教やコミュニケーションのスタイル、働き方が異なるため、これらの違いを無視するとトラブルの原因になります。たとえば、宗教的な習慣や食事の制限がある外国人に対して、日本の文化を一方的に押し付けるのは避けましょう。
また、日本ではチームワークを重視しますが、外国では個人の業務にフォーカスする傾向があります。お互いの違いを尊重して、歩み寄る姿勢を持てば、よりスムーズなコミュニケーションと職場環境を築けます。
4.日本語のレベルを確認する
日本語能力試験(JLPT)は、採用の目安になりますが、試験結果だけに頼らず、実際のコミュニケーション能力を評価しましょう。試験は、読解力や聞く力を中心に評価されますが、ビジネスシーンでは話す力や書く力も必要です。
資格の有無に関わらず、面接や業務のシミュレーションを通じて実際の言語能力や対応力を確認してください。これにより、採用後のコミュニケーションが円滑に進む可能性が高まります。
5.労働条件を理解しているか確認する
外国人労働者を雇用する際は、労働条件を明確に伝えて、相手が十分に理解しているか確認しなければなりません。日本語に不慣れな場合には、給与や勤務時間、社会保険の加入条件など、基本的な労働条件を丁寧に説明する必要があります。
可能であれば、母国語での説明資料を提供して、言語の壁を取り除く工夫を施すのが望ましいです。また、社会保険については、労働時間に応じて適切な加入手続きをする義務があり、違反すると雇用主にペナルティが科される可能性があります。
6.教育環境を整備する
外国人労働者が業務に円滑に取り組むには、業務マニュアルだけでは、細かなニュアンスや日本独特の働き方を十分に理解できない場合があります。このため、専属の教育担当者を配置して、定期的なトレーニングやコミュニケーションの機会を設けましょう。
また、外部の日本語スクールやボランティアを活用すれば、言語面でのサポートも強化できます。労働者同士が協力し合い、スムーズに業務を進めるための環境づくりが不可欠です。
7.求人広告で差別的な内容を掲載しない
外国人を採用する際、求人広告において差別的な内容を含んではなりません。たとえば、国籍や人種を限定する表現は差別とみなされる可能性があり、法的なトラブルに発展する場合もあります。
このため、求人を作成する際、作成者に意図がなくても、誤解を招く表記は避けるべきです。さらに、使用する言葉にも注意が必要です。
NG表記 | 国籍不問 | すべての広告は国籍を問わないことが基本であるため、あえて表記する必要がない |
外国人歓迎 | 国籍による優遇は認められない | |
〇〇国籍の方限定 | 国籍による制限は認められない | |
外人、原住民、後進国 | 単語自体が差別的な内容である(外国人・現地人・発展途上国などはOK) | |
OK表記 | 留学生歓迎 | 属性に関する表記である(不可や限定の表記はNG) |
〇〇国籍の方が多く働いています | 自社の現状を示すだけの表記である | |
日本語で日常会話レベルの意思疎通ができる方 | 能力に関する表記である | |
〇〇免許を持っている方 | 資格の有無に関する表記である |
外国人採用のステップは5つ
次は、外国人採用のステップについて解説します。
- ステップ1.求人募集をかける
- ステップ2.在留カード・在留資格を確認する
- ステップ3.面接をする
- ステップ4.雇用契約を結ぶ
- ステップ5.在留資格申請・変更を行う
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
ステップ1.求人募集をかける
外国人の求人募集の方法は、以下のとおりです。
- 自社サイトや求人サイトに掲載
費用を抑えられるが、雇用の手続きやフォロー、面談、専門家への依頼などを自ら手続きする必要がある
- 人材紹介会社を利用
在留資格の対応にも慣れているため、はじめて外国人労働者を採用する場合や複数採用したい場合におすすめ。また、国の認可を受けた人材派遣会社や紹介会社との取引が大切になる
- 社員からのリファラル採用
既存の外国人社員や知人から紹介してもらう方法で、心理的安全性による定着率が高い傾向にある
ステップ2.在留カード・在留資格を確認する
偽造カードの確認は、目視や専用アプリで実施できます。さらに、在留資格の内容と期限をチェックして、希望する職務が可能かを判断しましょう。
たとえば、「就労不可」となっていても、裏面に資格外活動許可が記載されていれば、一定の条件下であれば働けます。また、留学生の場合は、入社1〜3か月前に就労ビザへの変更手続きが必要です。
ステップ3.面接をする
外国人採用を成功させるためには、面接時に日本語能力だけでなく、応募者の業務適性や文化適応力を確認しましょう。日本語が流暢でも、必ずしも即戦力になるとは限らないため、これまでの経験や専門知識を具体的に掘り下げて確認しなければなりません。
また、文化や雇用習慣の違いも見落とさないように注意が必要です。自己アピールが強い応募者でも、その背景や実際の役割を正確に把握して、希望する職務に合致しているか慎重な評価が大切です。
ステップ4.雇用契約を結ぶ
海外では契約内容を重視する国が多く、契約書に記載されていない事項は認めないという考えが一般的です。また、言葉の壁があるため、口頭での説明だけでは誤解やトラブルが発生するリスクが高くなります。
このため、労働条件を明確にして、契約書を応募者の母国語で用意するのが効果的です。これにより、認識のズレを防ぎ、安心して働いてもらえる環境を提供できます。
ステップ5.在留資格申請・変更を行う
海外在住の候補者は、入国前に「在留資格認定証明書」を取得して、日本での就労ビザを申請する必要があります。国内在住の外国人でも、業務内容が現在の在留資格に合致しない場合は「在留資格変更許可申請」を届け出なければなりません。
申請には多くの書類が必要で、企業側のサポートが求められるため、登録支援機関や行政書士などに依頼するとスムーズに手続きを進められます。
なお、登録支援機関については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【担当者必見】登録支援機関とは?特定技能制度における支援内容やメリット、選ぶ際のポイントを解説!
外国人採用の注意点でよくある3つの質問
最後に、外国人採用の注意点でよくある質問について紹介します。
- 質問1.外国人採用にかかる費用は?
- 質問2.外国人雇用の必要書類は?
- 質問3.外国人にも社会保険や税金は適用されるの?
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.外国人採用にかかる費用は?
外国人採用にかかる費用は、対象者の居住地や採用プロセスによって異なります。海外在住者を採用する場合は、渡航費や在留資格の取得費用、日本語教育費などを含めて、約100〜150万円が必要です。
一方、日本在住の外国人を採用する際には、渡航費や生活費がかからないため、費用は80〜100万円程度に抑えられます。どちらの場合でも、人材紹介会社への紹介手数料や在留資格に関する申請費用が必要となる点は共通しています。
質問2.外国人雇用の必要書類は?
外国人を雇用する際には、以下の書類を用意する必要があります。
- 在留カード
- 「雇用保険被保険者資格取得届」または、「外国人雇用状況届出書」
さらに、在留資格の申請には「雇用契約書」と「労働条件通知書」も必要です。書類の準備が不安な場合は、転職エージェントなどの専門家に相談し、サポートを受けると安心です。
質問3.外国人にも社会保険や税金は適用されるの?
外国人を雇用する際にも、社会保険や税金は日本人と同様に適用されます。外国人が正社員として働く場合や、アルバイトでも正社員の労働時間の4分の3以上働く場合には、社会保険への加入が法律で義務付けられています。
社会保険には健康保険や厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険が含まれており、社員の希望に関わらず加入しなければなりません。また、所得税や住民税も外国人に対して日本人と同じ基準で適用されます。
まとめ
本記事では、外国人採用における注意点や採用動向、メリット・デメリット、採用ステップをご紹介しました。
外国人採用のメリットとして、人材不足の解消や海外顧客に対するサービスの質が向上、企業イメージの向上があげられます。しかし、文化や習慣が異なるため、コミュニケーションの難しさや研修の調整が必要で、採用手続きの複雑さもあります。
また、採用時には、雇用できる外国人かどうかの確認や、日本語能力の評価、労働条件の理解度などに注意しましょう。さらに、異なる文化や価値観を理解する対策や差別的な内容に注意した募集を心がけてください。
求人募集や手続きには、知識や時間が必要となるため、人材紹介会社や登録支援機関や行政書士などに依頼するとスムーズに手続きを進められます。
なお、株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、グローバル人材に対する総合的な生活支援を実施しており、外国人の受け入れにおける豊富な経験と知識を有しています。ご相談・お見積りはもちろん無料です。まずはお気軽にお問合せください。⇒株式会社グローバルヒューマニー・テックに相談する