少子高齢化による人手不足により、外国人労働者の雇用を検討している企業も多いのではないでしょうか。もし、外国人労働者の雇用を検討する場合は、どのようなメリット・デメリットがあるのか事前に理解しておくことが大切です。

この記事では、外国人労働者の受け入れに関する現状や問題点、外国人労働者を受け入れるメリット・デメリットについて解説します。また、外国人労働者の受け入れにおける採用の注意点やステップについても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

編集部

日本における外国人労働者の受け入れ状況

日本における外国人労働者の受け入れ状況

参考:厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】』(令和5年10月末現在)

厚生労働省が令和5年10月に発表した「外国人雇用状況」によると、外国人労働者の受け入れ状況は前年比で5.5%増となり、2022年からは12.4%の増加です。

また、外国人労働者の数は2,048,675人を超え、届出が義務化された平成19年以降で過去最高を更新しています。とくに、注目すべきは、専門的・技術的分野での在留資格を持つ外国人労働者の増加で、2023年は50万人に達しました。

1.国別の外国人労働者数

国別の外国人労働者数

参考:厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】』(令和5年10月末現在)

日本における外国人労働者を国別に比較すると、ベトナムからの労働者が最も多く、全体の約25.3%を占める518,364人という結果です。次に、中国(香港とマカオを含む)が全体の労働者の19.4%を占める397,818人と続いています。

また、フィリピンからの労働者も多く、全体の11.1%を占める226,846人が日本で働いています。このような結果から、アジア諸国からの労働者の割合が高い傾向にあることが明らかです。

2.産業別の外国人労働者数

産業別の外国人労働者数

参考:厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】』(令和5年10月末現在)

産業別の外国人労働者数を比較すると、製造業が最も多く、552,399人が従事していることがわかります。これは、全体の27.0%を占める結果です。製造業は日本の基幹産業のひとつであり、その重要性が外国人労働者の数にも表れています。

また、サービス業が320,755人で全体の労働者の15.7%、卸売業と小売業が263,555人で12.9%という結果です。これらのデータから、多くの産業が外国人労働力に依存している現状が伺えます。

なお、外国人労働者の賃金については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:【最新版】特定技能「製造業」とは?3分野の概要や要件、採用方法をわかりやすく解説します!

外国人労働者の受け入れにおける社会的な3つの問題点

次に、外国人労働者の受け入れにおける社会的な3つの問題点について解説します。

  • 労働環境が整備されていない
  • 外国人労働者に対する差別がある
  • 安価な賃金で雇用できると誤解されている

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.労働環境が整備されていない

外国人労働者を受け入れる企業の労働環境が整備されておらず、長時間労働やいじめ、差別、パワーハラスメントといった問題に直面するケースも少なくありません。

これらの状況は、外国人労働者が離職する原因になり得るため、企業は労働環境の改善に真剣に取り組まなければなりません。企業が持続可能な発展を遂げるためには、労働環境の整備も欠かせない課題の1つです。

2.外国人労働者に対する差別がある

外国人労働者に対する差別は、精神面の健康に深刻な影響をおよぼしており、うつ病などの精神的疾患を引き起こす原因の1つです。多くの外国人労働者が、国や言語、文化の違いなどで差別的な言動を感じており、このような状況は人権侵害にもつながります。

社会全体として、外国人労働者に対する公正な扱いを保証し、差別を根絶するための具体的な対策が不可欠です。

3.安価な賃金で雇用できると誤解されている

外国人労働者にも最低賃金法が適用されるため、日本人労働者と同じように最低賃金以上の報酬を支払う必要があります。最近では、日本の平均賃金を上回る国も増えており、賃金が不適切であれば外国人労働者が日本で働く意欲を失う可能性があります。

そのため、外国人労働者のスキルや経験に基づいた適切な賃金設定が、企業が長期的に労働力を確保するためにも欠かせません。

なお、外国人労働者の賃金については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:外国人労働者の平均賃金とは?在留資格ごとに賃金の差が生じている理由や基本的なルールを徹底解説!

外国人労働者を受け入れるメリットは5つ

次に、外国人労働者を受け入れるメリットについて解説します。

  • 労働力の確保ができる
  • 社内のグローバル化が期待できる
  • 職場が活性化する
  • 新しいアイデアが創出される機会が増える
  • 海外進出の足掛かりになる

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.労働力の確保ができる

サービス業をはじめとする分野では、人手不足がより深刻化しており、国内の少子高齢化がその状況を加速させています。このような背景のなか、外国人労働者の雇用は必要な人材を確保し、ビジネスの継続性を保つために欠かせません。

また、外国人労働者の雇用は、新たなアイディアや技術の導入にもつながり、職場全体の生産性向上に寄与する可能性があります。

2.社内のグローバル化が期待できる

多くの外国人労働者は、母国語のほかに日本語や英語を含む複数の言語を話せます。そのため、海外のクライアントや顧客とのコミュニケーション、通訳、接客など多岐にわたる業務での貢献が期待できます。

このような人材が職場に加わると、社内に新しい文化や視点がもたらされ、技術や事業をはじめとする新しい領域への進出が可能です。さらに、英語を社内公用語とするなど、グローバルな業務運営がスムーズになります。

3.職場が活性化する

外国人労働者は、自ら海外で働く決意をしており、高いモチベーションを持っている人材が多い傾向にあります。このような意欲的な姿勢は、周囲の日本人スタッフにも刺激を与え、新たな学びや成長の機会を提供します。

とくに、日常的な業務がルーチン化して新鮮さを欠いている職場において、外国人労働者の存在は、新しいアイデアや異なる視点をもたらし、全体の雰囲気を活気づける効果が期待できるかもしれません。

4.新しいアイデアが創出される機会が増える

外国人労働者は、日本人とは異なる視点や斬新なアプローチで問題解決に取り組みます。日本企業が一般的に重視する協調性や同質性が、イノベーションの障壁となる場合も少なくありません。

外国人労働者の採用は、そうした状況を打破し、新しいアイデアやサービスを生み出す起爆剤になる可能性があります。とくに、グローバルな市場で成功を収めるためには、多様な視点を持つ外国人労働者の能力を引き出すことが大切です。

5.海外進出の足掛かりになる

企業が目指す市場の言語や文化、法律に精通している外国人労働者は、新しい地域に事業を拡張する際の貴重な資源です。現地の習慣や法規制を理解している人材が内部にいると、言語の障壁や文化的な誤解を避け、よりスムーズな事業展開が可能になります。

数年後の海外展開を視野に入れている場合、早期から関連国の外国人を積極的に採用すると、将来的なリスクを軽減し、事業の成功率が高まります。

外国人労働者を受け入れるデメリットは3つ

次に、外国人労働者を受け入れるデメリットについて解説します。

  • コミュニケーションが難しい場合がある
  • 採用にコストと手間がかかる
  • 文化や風習の違いに戸惑う

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.コミュニケーションが難しい場合がある

日本語のスキルが乏しい外国人労働者の場合、意思疎通がスムーズにできないケースがあります。また、日本人に多い非言語的なコミュニケーションや暗黙の了解を期待する文化は、具体的な指示を必要とする多くの外国人にとっては理解しにくいかもしれません。

これにより、業務の効率が低下する場合があります。しかし、職場でのコミュニケーション方法や指示の出し方に関する明確なガイドラインを設けて、外国人労働者の日本語学習を支援すれば、問題が解消される可能性があります。

2.採用にコストと手間がかかる

外国人労働者の採用は、書類の提出や確認が必要な場面が多く、日本人の雇用とは異なる手間やコストがかかります。とくに、外国人の雇用に不慣れな企業では、手続きに多くの時間を要します。

さらに、ビザの取得支援や法的な準備、場合によっては言語研修など、外国人労働者の受け入れには多額の初期費用が必要になるケースも少なくありません。これらのコストと手間は、企業が外国人採用を決定する際の重要な検討事項の1つです。

3.文化や風習の違いに戸惑う

異なる背景を持つ人々が一緒に働くと、善悪や価値観の基準が異なり、悪気がなくともお互いに不快な思いをする場合があります。場合によっては、文化的な誤解が法的な問題に発展することも考えられます。

そのため、互いの文化や習慣を事前に学び、理解を深めることが大切です。適切な理解と予防策を講じると、問題は軽減され、よりスムーズな職場環境の実現が期待できます。

外国人労働者を受け入れる際の注意点は3つ

次に、外国人労働者を受け入れる際の注意点について解説します。

  • 在留資格(就労ビザ)が必要になる
  • 在留資格に合った仕事内容でなければならない
  • 生活面も含めた支援体制の整備が求められる

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.在留資格(就労ビザ)が必要になる

在留資格にはさまざまな種類があり、それぞれ就労が許可されている条件が異なります。たとえば、「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ人々は、原則として就労が制限されています。

企業がこのような条件を理解せずに外国人を雇用した場合に直面するのが不法就労の問題です。正しい在留資格を持つ外国人を雇用するためには、事前に在留資格の種類を詳しく確認するようにしましょう。

2.在留資格に合った仕事内容でなければならない

在留資格ごとに許可される職種が異なるため、雇用する前には次のような点を確認しましょう。

  • 技術・人文知識・国際業務ビザ

主にエンジニア、経理、マーケティングなどの専門職に適用される

  • 技能ビザ

調理師や大工など、特定の熟練技能を必要とする職種で就業できる

  • 経営・管理ビザ

マネジメント職や経営者が対象となる

もし、在留資格の種類に見合わない仕事に従事させると、不法就労と判断される可能性があります。たとえば、調理師として雇用した外国人に接客のみをさせるのは、在留資格の条件と合致しません。

3.生活面も含めた支援体制の整備が求められる

新しい環境にスムーズに適応し、効果的に業務を遂行できるようにするためには、生活面も含めた支援体制の整備が不可欠です。具体的な支援策は以下のとおりです。

入社前の準備

  • 労働条件や雇用条件の詳細な説明
  • 社会保険への加入手続き
  • 外国人雇用状況の届出

生活面でのサポート

  • 銀行口座の開設支援
  • 住居探しの補助
  • 日本での生活に必要な情報の提供

職場でのサポート

  • オリエンテーションを通じての社内ルールの周知
  • 日本語学習プログラムの提供

これらの支援を提供すると、外国人労働者が文化や言語の壁を乗り越え、効率的に仕事に集中できる環境が整います。

外国人労働者を受け入れる際のステップは5つ

次に、外国人労働者を受け入れる際のステップについて解説します。

  • ステップ1.人材募集
  • ステップ2.選考・内定
  • ステップ3.労働契約の締結
  • ステップ4.在留資格(就労ビザ)申請・変更
  • ステップ5.入社準備・雇用開始

それぞれについて詳しくみていきましょう。

ステップ1.人材募集

日本人の採用と同じように、求人サイトや自社の求人ページ、ハローワークなどのチャネルを通じて求人情報を提供できます。また、いくつかの求人サイトは、外国人雇用に特化してサポートする機能を備えており、求職中の外国人に対して採用情報を効率良く伝えることが可能です。

このプロセスでは、言語や文化の違いを考慮し、求人情報を明確かつ理解しやすい形で提供するようにしましょう。求人内容の翻訳や文化的ニュアンスを適切に反映させる工夫が必要です。

ステップ2.選考・内定

書類選考で応募者の資格や経験を確認し、その後の面接で、ビジネスマナーやコミュニケーション能力、日本語力、そして候補者の人柄や仕事に対する理解を詳しく見極めます。

これらは、異なる文化背景を持つ人材が自社の環境に適応できるか判断するために重要なプロセスです。もし、候補者が自社に合った人材であると判断された場合、内定の通知を行います。

ステップ3.労働契約の締結

在留資格に問題がない点を確認したうえで、賃金や労働時間など入社後の労働条件について本人と詳細に話し合います。この過程では、日本の労働基準法に則り、労働条件通知書の交付が義務付けられており、すべての条件を明確に書面へ記載しなければなりません。

また、海外では書面による契約が一般的であるため、契約書はトラブル防止の観点からも詳細に作成する必要があります。さらに、外国人労働者が契約内容を理解できるよう、必要に応じて母国語や英語の翻訳を提供する必要もあります。

ステップ4.在留資格(就労ビザ)申請・変更

労働者が日本で合法的に働くためには、適切な在留資格の種類を正確に理解し、取得する必要があります。また、新規に外国人を日本へ招く場合、「在留資格認定証明書交付申請」の提出が求められます。

一方で、すでに日本に在留している外国人が新たな職に就く場合には、「在留資格変更許可申請」が必要です。これらの手続きは、外国人労働者が日本で働くためには欠かせない手続きです。

ステップ5.入社準備・雇用開始

在留資格の取得が必要な場合、一般的に1〜3ヶ月の期間を要するため、この時間を利用して就業のための準備をしましょう。まず、労働者が新しい環境でスムーズに仕事をはじめられるようにするため、住居を手配し、仕事内容の説明や就業に必要なものを準備します。

この時点での適切な受け入れ体制の整備が重要であり、外国人労働者が最大限に能力を発揮できるような支援が企業には求められます。

外国人労働者を受け入れるメリットでよくある3つの質問

最後に、外国人労働者を受け入れる際のステップについて紹介します。

  • 在留資格「特定技能」1号・2号の違いとは?
  • 外国人労働者の最低賃金は?
  • 特定技能と技能実習の違いは?

それぞれについて詳しくみていきましょう。

質問1.在留資格「特定技能」1号・2号の違いとは?

在留資格「特定技能」1号・2号の違いは、在留期間です。「特定技能」1号の場合、外国人労働者の在留期間の上限は5年までとされており、この間に限定された範囲内での就労が許可されます。

一方、「特定技能」2号は、在留期間に上限が設けられていないため、より長期的な就労が可能です。また、「特定技能」2号のもう1つの大きな特徴は、要件を満たす場合に家族帯同が許可される点です。

質問2.外国人労働者の最低賃金は?

外国人労働者の最低賃金も、日本人労働者と同じように最低賃金法に基づいて定められています。この法律は、業種や職種、雇用形態にかかわらず、すべての労働者が一定の賃金を保証することが目的です。

なお、最低賃金は地域ごとに設定されているため、外国人労働者も日本国内で働く場合、同じ地域で働く日本人労働者と同じ条件の最低賃金が保証されます。企業は、この法律を遵守しなければなりません。

質問3.特定技能と技能実習の違いは?

技能実習は、主に外国人が日本で専門的な技能や知識を習得し、母国での発展に貢献することを目的とした公的制度です。これに対して、特定技能は日本の労働市場における即戦力として、特定の産業分野で働くための技能を有する外国人の受け入れが目的です。

しかし、技能実習制度は誤った認識により、労働力としての側面が強調されてしまい、多くの国から指摘を受けています。これにより、2024年以降の廃止も議論されており、新たな人材育成と確保を目的とする制度の創設が検討されています。

まとめ

この記事では、外国人労働者の受け入れに関する現状や問題点、外国人労働者を受け入れるメリット・デメリット、採用の注意点、ステップについて解説しました。

外国人労働者の受け入れにおいては、労働力の確保、社内のグローバル化、職場の活性化などのメリットがあります。一方で、コミュニケーションの課題や、文化や風習の違いによる戸惑い、採用コストや手間がかかるなどの問題も存在します。

外国人労働者を受け入れる企業は、在留資格の確認や特定技能の種類を正しく理解し、外国人労働者の採用ステップを進めるようにしましょう。

株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、グローバル人材に対する総合的な生活支援を実施しており、特定技能外国人の受け入れにおける豊富な経験と知識を有しています。ご相談・お見積りはもちろん無料です。まずはお気軽にお問合せください。⇒株式会社グローバルヒューマニー・テックに相談する

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