少子高齢化社会により、外国人労働者の採用が10年間で約3倍近くになっており、年々増加傾向です。外国人労働者を採用すると、ビジネスの可能性を広げるチャンスがありますが、一方で注意すべきポイントもあります。

本記事では、外国人労働者を雇うためのステップやメリット・デメリットをご紹介します。また、雇用できる条件やよくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

編集部

外国人労働者の雇用が増加している背景

外国人労働者の雇用が増加している背景

参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)|厚生労働省

厚生労働省が発表した資料によると、2023年10月末時点で、外国人労働者の人数は2,048,675人です。これは、2007年に届出が義務化されてから、過去最高の人数となり、10年間で約3倍の増加です。

外国人労働者の雇用が年々増加している背景には、国内で労働力不足の深刻化が挙げられます。製造業や建設業、介護業界では、高齢化に伴う労働者の減少が顕著で、補うように外国人労働者の受け入れが進んでいます。

外国人労働者を雇うメリットは3つ

次は、外国人労働者を雇うメリットについて解説します。

  • 人手不足が解消できる
  • グローバル化による新たな発見がある
  • 海外進出の足掛かりになる

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.人手不足が解消できる

若い人材の獲得が困難な超少子高齢化社会において、優秀な外国人労働者の採用は組織の新たな活力となります。日本国内での若い人材不足を補うため、多くの企業が技術力や専門知識を持つ外国人の採用に積極的です。

これにより、新卒のエンジニアなど多様な分野で人材を確保することが可能となり、業務の効率化やイノベーションの促進が期待されています。

2.グローバル化による新たな発見がある

外国人労働者は、母国語に加えて日本語や英語など複数の言語を話せる場合が多いです。そのため、海外の顧客との対応や接客、通訳などさまざまな場面での活躍が期待できます。

また、彼らの持つ独自の文化や専門知識が社内に新しい視点をもたらすため、従来の企業文化が豊かになり、ビジネスの機会が広がります。

3.海外進出の足掛かりになる

海外進出を考えている企業であれば、その国の出身者を雇用するのは有効な戦略です。現地の言語や文化に精通している外国人労働者は、情報収集やマーケティング活動において強力な戦力となります。

さらに、外国人労働者を採用すると、ビジネスで対応可能な言語が増え、地域特有のニーズや動向の把握も可能です。

なお、外国人労働者を受け入れるメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:外国人労働者を受け入れる5つのメリット|受け入れに関する現状や問題点、注意点まで詳しく解説します!

外国人労働者を雇うデメリットは3つ

次は、外国人労働者を雇うデメリットについて解説します。

  • 文化や習慣の違いがある
  • 言語の壁がある
  • 雇用手続きや労務管理が煩雑である

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.文化や習慣の違いがある

異なる背景を持つ従業員間での誤解や、意図せず法的問題に触れるリスクもあるため、異文化間の理解を深める努力が欠かせません。たとえば、意思疎通の問題やコミュニケーションの方法に対する考え方の違いにより、意図しない摩擦が生じるケースもあります。

また、宗教的制約により特定の食事をとれない場合や、特定の時間に礼拝を行う必要があるため、職場の環境調整が求められます。外国人労働者との円滑な関係を築くためには、事前にその文化や信仰について理解を深め、職場全体での協力が不可欠です。

2.言語の壁がある

言語の壁は、業務に直接的な支障をきたし、効率の低下や誤解を招く原因になります。これを避けるためには、外国人従業員の日本語研修が必要ですが、そのための時間とコストは想像以上にかかります。

また、簡単な日常会話が可能であっても、専門的な職業に必要な言語スキルが伴っておらず、ギャップを埋めるのは容易ではありません。そのため、採用前には候補者の言語能力を十分に評価し、企業の要求するレベルに達しているのか確認が必要です。

3.雇用手続きや労務管理が煩雑である

雇用手続きや労務管理は、日本人従業員と比べて複雑で、企業にとって時間と労力を要する業務です。外国人労働者を雇う際には、募集の方法や場所、言語の選択にも配慮が必要です。

さらに、適切な在留資格の確保から労働許可の取得、社会保険の手続きに至るまで、多くのステップを踏まなければなりません。そのため、外国人労働者を採用する際には、これらの手続きに習熟した専門のスタッフや外部のサポートが不可欠です。

雇用が可能な外国人労働者の条件

次は、雇用が可能な外国人労働者の条件について解説します。

  • 在留カードを所持している
  • 就労が認められている在留資格である
  • 書類審査や面接による選考を行う
  • 業務内容が在留資格で認められた範囲内である

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.在留カードを所持している

在留カードは、「外国人の身分証明書」として、日本に3か月以上滞在する外国人に交付されるカードです。このカードには名前や国籍、生年月日、住所が記載されており、16歳以上の場合は顔写真も載っています。

外国人は在留カードを常に携帯する義務があり、所持していない場合は不法残留者とみなされ、罰則が科される可能性があります。また、在留カードを適切に所持していない外国人の採用は禁止です。

2.就労が認められている在留資格である

在留資格は、「就労ビザ」や身分系の在留資格など就労を認めるものとそうでないものがあります。在留資格によって認められている業務の範囲や期間も異なるため、雇用前に詳細を確認しておきましょう。

なお、適切な在留資格を有していない外国人労働者の雇用は法的に認められていません。そのため、企業は外国人を採用する前に、在留資格の内容も詳細に確認しておいてください。

3.在留期限が切れていない

在留期限とは、日本国内で合法的に滞在できる期間を示しており、この期間が過ぎた外国人労働者の雇用は法律に違反します。このような違法行為が発覚した場合、外国人本人は強制退去の対象となり、企業は不法就労助長罪に問われます。

そのため、外国人労働者を採用する前には、在留カードを確認し、在留期限内にあるかどうかを確かめましょう。期限切れであれば、すぐに更新手続きをしなければなりません。

4.業務内容が在留資格で認められた範囲内である

在留資格では、外国人が日本で就労可能な範囲が明確に決められており、専門性を要する職種や特定の業務に限定されている場合が多いです。たとえば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、専門的な知識を活かす職に就くことが認められていますが、単純労働は許されていません。

そのため、企業は採用を進める前に、在留資格が提供する職務内容に合致しているかを慎重に検証する必要があります。誤った在留資格で働かせると、法律違反となり、外国人労働者には強制退去などの重い処罰が課されます。

外国人労働者を雇うための5つのステップ

次は、外国人労働者を雇うためのステップについて解説します。

  • 外国人採用の求人募集をかける
  • 在留カード・在留資格を確認する
  • 書類審査や面接による選考を行う
  • 手続き・雇用契約を結ぶ
  • 在留資格申請・変更を行う

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.外国人採用の求人募集をかける

外国人採用の求人募集の方法としては、以下が挙げられます。

  • 自社サイト・求人サイト・SNSに掲載

日本人と同様の方法で掲載できるが、外国人雇用に関連する手続きや後のフォローは自社で管理する必要がある

  • 人材紹介会社に紹介してもらう

外国人労働者専門の人材紹介会社は、適切な在留資格や職種についての知識が豊富で、初めての外国人採用や複数採用に適している

  • 外国人社員や外国人の知人から紹介してもらう

同じ国籍を持つ人々のコミュニティからの推薦は、職場への定着や文化的適合性を高めるのに役立つ。また、すでに知っている間柄からの紹介は、信頼性や心理的な安心感を提供し、雇用の成功率を向上させる可能性がある

2.在留カード・在留資格を確認する

在留カードや在留資格で確認すべきポイントは以下のとおりです。

  • 在留カードの真偽と有効期限の確認

在留カードが偽造されていないかを目視や専用のアプリを用いて確認する。在留カードの在留期限が切れていないかをチェックし、有効期限内か確認する

  • 在留資格の詳細確認

在留カードに記載されている在留資格が、求める業務に適合しているか確認する。在留資格の横に記載されている「就労制限の有無」を確認し、就労可能かどうかを判断する

  • 資格外活動許可の確認

カード裏面の「許可:原則週28時間以内・風俗営業などの従事を除く」という記載がある場合、特定の条件下での就労が許可されている

3.書類審査や面接による選考を行う

外国人労働者の採用では、書類審査や面接による選考が中心です。まず、応募者の履歴書や職務経歴書を詳細に確認して、必要な資格や経験が求められるポジションに適合しているかを検討します。

その後、面接を通じて応募者の能力や性格、企業文化への適合性、言語能力などを評価します。面接では、仕事に必要な言語スキルだけでなく、異文化間コミュニケーション能力も重要です。

また、求職者が職場の環境に順応できるかどうかを見極めるために、状況判断力や柔軟性に関する質問も効果的です。

4.手続き・雇用契約を結ぶ

「労働条件通知書」または「雇用契約書」は、就労ビザの申請に必要な書類であり、申請をはじめる前に準備を完了しておきましょう。この契約書には、勤務地や労働時間、休暇、給与、解雇条件などの重要な項目を記載します。

雇用契約を結ぶ際には、外国人労働者が自国の言語で契約内容を完全に理解できるよう、母国語が望ましいです。

5.在留資格申請・変更を行う

日本国内での就労を目的とする外国人は、適切な「就労ビザ」の取得が必要です。まず、在留資格認定証明書交付申請書を用意し、必要な身元保証書や雇用契約書を添えて、地方出入国在留管理官署に提出します。

証明書が発行された後、外国人本人が日本大使館でビザの申請をします。また、特定技能を持つ人材は転職や雇用者の変更があった場合、在留資格の変更申請も必要です。

申請書の作成や書類の準備には企業と外国人双方の協力が求められるため、人材紹介会社や行政書士の支援を得るとスムーズに進められます。

外国人を雇うにはでよくある3つの質問

最後に、外国人を雇うにはでよくある質問について紹介します。

  • 質問1.外国人採用の費用は?
  • 質問2.優秀な外国人を雇用するポイントは?
  • 質問3.外国人採用に積極的な業界は?

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

質問1.外国人採用の費用は?

外国人を採用する際の費用は、求める人材のスキルや経験によって大きく変わります。たとえば、高度な資格を持つ人材の紹介費用は、日本人と同等か、場合によってはそれ以上かかります。

さらに、同一労働同一賃金の原則や最低賃金法の遵守が必要であるため、採用コストの削減は期待できません。国外からの採用では、渡航費や初期の住居設備の手配など、追加コストが発生するのが一般的です。

質問2.優秀な外国人を雇用するポイントは?

優秀な外国人労働者を採用するためのポイントは、以下のとおりです。

  • 給与と待遇の充実

日本の平均給与よりも低い報酬では、才能ある労働力がほかの高待遇を提供する国へ流出してしまうリスクがあるため、適正な給与設定は、外国人労働者の採用と定着に直結する

  • 多言語対応の職場環境

英語が使える環境を整えると、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍しやすくなる。全員が英語でコミュニケーションをとれるようにするのが理想的だが、少なくとも基本的な英語支援が必要となる

質問3.外国人採用に積極的な業界は?

外国人採用に積極的な業界は?

参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和元年 10 月末現在)|厚生労働省

外国人労働者を積極的に採用している業界は、製造業が一番多く、全体の約3割を占めています。これに続くのはサービス業、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業です。

これらの業界では、語学力に依存しない職種で能力を発揮できる外国人を多く採用しています。また、海外に支社を持つ企業や、海外生産を主軸にしている企業も外国人の採用に積極的です。

なお、特定技能「製造業」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:【最新版】特定技能「製造業」とは?3分野の概要や要件、採用方法をわかりやすく解説します!

まとめ

本記事では、外国人労働者を雇うためのステップやメリット・デメリット、雇用できる条件をご紹介しました。

外国人労働者の採用は、労働力不足の解消や新たなアイデアや視点の獲得、海外市場への進出には不可欠です。しかし、文化や言語の違い、雇用手続きの複雑さなどのデメリットも存在します。

求人募集は、自社や求人サイト、人材派遣会社などの活用がおすすめです。また、採用が決まって、契約を結ぶ際には、契約書は母国語でも作成しましょう。

さらに、在留資格の内容を事前に確認するのはもちろん、申請や変更手続きは、人材紹介会社や行政書士の支援を得るとスムーズに進められます。

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