監理団体は、受け入れ企業に対する指導やサポートを行い、技能実習の運営が円滑に進むように支援する団体です。団体によって実習生の管理体制やサポートの質が異なるため、慎重に選ばなければなりません。
本記事では、技能実習生の受け入れで知っておくべき「監理団体」の概要や役割、選ぶ際のポイントをご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
技能実習生の受け入れで知っておくべき「監理団体」とは?
技能実習生の受け入れには、企業単独型と団体監理型の2つの方式があります。ほとんどの技能実習生は団体監理型で受け入れられており、この方式ではエヌ・ビー・シー協同組合のような監理団体が実習生の募集や手続きを担当します。
一方、監理団体は、受け入れ企業に対する指導やサポートを行い、技能実習の運営が円滑に進むよう支援するのが特徴です。信頼性のある監理団体選びが、技能実習の成功に大きく影響するため、慎重な選定を心がけてください。
監理団体の要件
監理団体として活動するためには、特定の基準を満たして、主務大臣の許可を得なければなりません。基準は、以下のとおりです。
- 営利を目的としない法人である
(商工会議所、商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業協同組合、漁業協同組合、公益財団法人、公益社団法人、など)
- 監理団体の業務の実施の基準に従って事業を適正に行うに足りる能力を有する
- 監理事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有する
- 個人情報の適正な管理のため必要な措置を講じている
- 外部役員又は外部監査の措置を実施している
- 基準を満たす外国の送出機関と、技能実習生の取次ぎに係る契約を締結している
また、上記の基準を満たして、監理事業を適正に遂行する能力を保持している場合、第3号技能実習の実習監理を行う許可が得られます。
「一般監理団体」と「特定監理団体」の違い
技能実習生の受け入れは、監理団体の種類に応じて可能な期間が異なります。「特定監理事業」を行う監理団体は技能実習1号と2号(最大3年間)を監理できますが、「一般監理事業」を行う優良な監理団体であれば、技能実習3号(4〜5年目)も監理可能です。
このため、5年目までの長期実習を希望する企業は、一般監理事業を行う監理団体を選ぶ必要があります。また、優良な監理団体を選ぶと、受け入れ人数の増加などのメリットも得られます。
監理団体の主な役割
次は、監理団体の主な役割について解説します。
- 監査業務
- 訪問指導
- 入国後講習の実施
- 技能実習計画の作成や指導
- 送出機関との契約
- 技能実習生への相談体制の確保
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.監査業務
監理団体は、技能実習生の実習が計画通りに行われているかを確認するため、3か月に1回以上の定期監査を実施します。監査は、監査責任者講習を修了した監理責任者の指揮の下で行われ、実習状況の確認、受け入れ企業の法令遵守、技能実習生との面談、生活環境の確認などの役割があります。
また、必要に応じて臨時監査も実施され、問題が発見された場合には早急な対処が必要です。監査報告は、監査後2か月以内に技能実習機構へ提出する義務があります。
2.訪問指導
監理団体は、技能実習が計画通りに進んでいるか確認するため、定期的に受け入れ企業を訪問して、実習生の状況を把握します。1号技能実習の場合は毎月1回以上、2号技能実習以降は3か月ごとに訪問が行われ、適切な指導やサポートが必要です。
また、訪問指導の記録は事業所に保管され、年に1回、技能実習機構に報告されます。この指導により、技能実習の適正な実施の維持を目指しています。
3.入国後講習の実施
技能実習生は日本に入国した後、最初の約1か月間、講習を受けなければなりません。この入国後講習では、日本語教育をはじめ、技能実習制度や法令の理解、日本での生活ルールに関する指導があります。
監理団体が講習する場合もありますが、外部の適切な施設への依頼も可能です。この期間中は、技能実習を行うことは禁止されており、実習生がスムーズに生活や業務を始めるための大切な準備期間となります。
なお、技能実習生の人数や割合については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【項目別】技能実習生の人数や割合|受け入れ人数枠や企業に求められる要件を解説します!
4.技能実習計画の作成や指導
技能実習生を受け入れる企業は、事前に技能実習計画を作成して、外国人技能実習機構の認可を得る必要があります。この計画では、実習生がどのような作業を通じて、技能や知識を学ぶのかを明確に記載しなければなりません。
また、計画の作成にあたっては、監理団体のサポートを受けられるため、その指導に従って内容を整えましょう。このため、監理団体の担当者には、計画作成を支援するための十分な知識と経験が求められます。
5.送出機関との契約
技能実習生を受け入れる際、送出機関の選定と窓口対応は監理団体が担当します。実習生の失踪の多くは、悪質な送出機関による高額な手数料や保証金が原因であるため、健全で適切な教育を提供する送出機関を監理団体が選ぶ必要があります。
また、受け入れ企業が送出機関と直接連絡を取る場合はありません。このため、送出機関の状況について関心がある場合は、監理団体の職員に具体的な教育内容や提携状況を確認しましょう。
6.技能実習生への相談体制の確保
監理団体は、技能実習生が相談できる仕組みを整えなければなりません。たとえば、人権侵害が起きた際、受け入れ企業の担当者に相談できない状況でも、監理団体へ直接相談できれば、迅速な支援が可能です。
さらに、技能実習生の母国語での相談対応ができる体制が整っていると、より安心した支援が提供されます。監理団体には母国語対応スタッフや専任のサポートスタッフが在籍しているのが理想ですが、団体によってそのサポート体制には差があります。
監理団体を選ぶ際のポイントは3つ
次は、監理団体を選ぶ際のポイントについて解説します。
- 複数の監理団体を比較検討する
- 監査業務の実施状況を確認する
- 受け入れたい国籍に対応しているか確認する
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.複数の監理団体を比較検討する
監理団体には実績豊富な団体から、新規のペーパー団体までさまざまな種類があり、適切な選定が求められます。費用の比較は有効な手段ですが、単に金額が安いというだけで選ばず、監査の内容やサポート体制についても確認することが大切です。
また、費用の提示方法も団体によって異なるため、実費とそのほかの経費をわけて見極め、実態をしっかり把握するようにしましょう。
2.監査業務の実施状況を確認する
監理団体のなかには、適切な監査や指導を行わない団体も存在しているため、企業が知らないうちに法令違反を犯してしまうケースがあります。技能実習制度では、労働基準法違反が問題となる場合も多く、監理団体が十分に機能していないのが要因です。
また、企業として不祥事を防ぎ、実習生が安心して働ける環境を整えるためにも、信頼できる監理団体を選び、適切なサポートを受けましょう。
3.受け入れたい国籍に対応しているか確認する
希望する国からの実習生を迎えるには、監理団体がその国籍に対応している必要があるため、確認するのがおすすめです。
特定の国にこだわらない場合は、多くの国籍に対応している監理団体を選ぶと、企業のニーズや将来のビジョンに合った提案が受けられる可能性が広がります。このため、監理団体の対応範囲をしっかり見極めましょう。
技能実習生の監理団体でよくある3つの質問
最後に、技能実習生の監理団体でよくある質問について紹介します。
- 質問1.監理団体と登録支援機関の違いは?
- 質問2.監理団体の許可が取り消されるケースとは?
- 質問3.監理団体は途中で変更できる?
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.監理団体と登録支援機関の違いは?
登録支援機関とは、特定技能外国人を雇用する企業に代わって必要な支援を行う機関です。民間団体や個人事業主でも条件を満たせば、登録支援機関として支援が可能です。
また、技能実習生を支援する監理団体とは異なり、登録支援機関は特定技能制度にもとづいた支援を行い、対象とする在留資格も異なります。一方、監理団体は技能実習生に関する支援を、登録支援機関は特定技能外国人に対する支援を行うという明確な役割の違いがあります。
なお、登録支援機関については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【担当者必見】登録支援機関とは?特定技能制度における支援内容やメリット、選ぶ際のポイントを解説!
質問2.監理団体の許可が取り消されるケースとは?
監理団体が許可を受けていても、取り消されるケースは以下のとおりです。
- 基準を満たさなくなった場合
- 監理団体が欠格事由に該当することになった場合
- 許可の条件に違反した場合
- 改善命令に違反した場合
- 入管法令や労働法関係法令に違反した場合など
また、許可が取り消されると、現在監理している技能実習生の監理が継続できなくなり、5年間は許可が得られません。このため、監理団体を選定する際には、その団体の規模や信頼性を考慮する必要があります。
質問3.監理団体は途中で変更できる?
技能実習の実施中に不安を感じた場合、監理団体の変更は可能です。途中から監理団体への信頼が揺らぐような場合があれば、再度情報を収集して、新たな監理団体を選び直すのも選択肢のひとつです。
途中での変更は手間がかかりますが、技能実習生の適切なサポートを確保するためにも、信頼できる監理団体を選びましょう。
まとめ
本記事では、技能実習生の受け入れで知っておくべき「監理団体」の概要や役割、選ぶ際のポイントをご紹介しました。
監理団体として活動するためには、特定の基準を満たして、主務大臣の許可を得なければなりません。監理団体には、監査や訪問指導、技能実習計画の作成、入国後講習など、多岐にわたる役割があります。
実習生の失踪の多くは、悪質な送出機関による高額な手数料や保証金、相談体制が整っていないのが原因であり、健全で適切な教育を提供する送出機関の選定が欠かせません。
また、監理団体はさまざまな種類があり、費用の比較だけでなく、監査の内容やサポート体制についても比較して選定しましょう。さらに、監査業務を適切にしているか状況確認や、受け入れたい国に対応しているかも確認しておく必要があります。
なお、株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、グローバル人材に対する総合的な生活支援を実施しており、外国人の受け入れにおける豊富な経験と知識を有しています。ご相談・お見積りはもちろん無料です。まずはお気軽にお問合せください。⇒株式会社グローバルヒューマニー・テックに相談する