少子高齢化が進む日本では、さまざまな分野で人手不足が問題となっていますが、とくに介護現場での人材不足は深刻です。このため、外国人が介護職に就ける資格のひとつに、在留資格「介護」があります。

本記事では、在留資格「介護」の概要や介護分野で働ける在留資格の種類、メリット・デメリットをご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

編集部

在留資格「介護」とは?

在留資格「介護」は、外国人が日本で介護の仕事に従事するために必要な資格です。この資格は、2017年9月に新たに設けられ、介護福祉士養成校を修了し、介護福祉士の資格を取得しているのが条件です。

また、「介護」の在留資格を持っていれば、外国人は日本国内の介護施設などでの労働が認められ、高齢者や障がい者の支援に携われます。これにより、日本の介護現場での人材不足が解消されると期待されています。

介護分野で働ける在留資格は4つ

次は、介護分野で働ける在留資格について解説します。

  • 在留資格「介護」
  • EPAにもとづく外国人介護福祉士
  • 特定技能
  • 技能実習

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.在留資格「介護」

在留資格「介護」は、介護分野で外国人が日本で働くための資格で、取得するためには介護福祉士養成校を卒業し、介護福祉士の資格を持つ必要があります。日本語能力も高く、N2相当のレベルが求められるため、言語面での対応力も高いです。

また、養成校在学中から介護施設でアルバイトをするケースが多く、卒業後すぐに即戦力として働けるのが特徴です。さらに、この資格を持っていると、訪問介護サービスにも従事でき、長期間にわたって安定した就労ができます。

2.EPAにもとづく外国人介護福祉士

EPA(経済連携協定)は、特定の国々との貿易や投資を促進するために、規制や関税を緩和・撤廃する条約です。日本では、インドネシアやフィリピン、ベトナムの3か国と介護分野においてEPAを締結し、これらの国々から来日する人々が介護福祉士の国家資格取得を目指しています。

候補者は日本語教育を受けた後、介護施設で技能研修を行い、4年以内に国家試験に合格しなければなりません。JICWELSが受け入れ調整機関として候補者のあっせんを行い、受け入れ施設の募集も毎年されています。

3.特定技能

特定技能「介護」は、2019年4月に施行され、日本での人手不足を補うために導入された在留資格です。この資格を取得するには、介護技能や日本語能力試験に合格する必要があります。

また、特定技能「介護」の資格を持つ外国人は、最大5年間日本で労働ができます。さらに、介護福祉士の資格を取得すれば、永続的な就労も可能です。

技能実習生からの移行も進んでおり、特定技能は即戦力として期待されています。

なお、在留資格「特定技能」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:【2024年最新版】在留資格「特定技能」とは?制度の概要や採用方法、注意点をわかりやすく解説!

4.技能実習

外国人技能実習制度は、日本の産業現場で外国人に技術や知識を学んでもらい、それを母国の経済発展に活かしてもらうのが目的の制度です。2017年11月から介護分野もこの制度の対象に加わり、実習生は日本語や介護の基礎知識を習得するために1〜2か月の講習を受けた後、実習先に配属されます。

また、1年目と3年目には試験があり、合格すれば最大5年間の実習が可能です。しかし、技能実習制度には問題もあり、法令違反や不適切な待遇が社会問題となっています。

4つの在留資格の違いや比較

次は、在留資格の違いについて解説します。

  • 技能レベルや日本語
  • 就労できる期間

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

技能レベルや日本語

介護における技能や日本語能力のレベルは、それぞれの在留資格によって異なります。介護スキルの高さでは、在留資格「介護」が一番高く、次にEPA、特定技能、技能実習の順に位置づけられます。

また、日本語能力のレベルも在留資格「介護」が一番高く、EPA、技能実習、特定技能の順に高いのが一般的です。この結果より、在留資格「介護」を持つ外国人が、ほかの在留資格と比べて高度なスキルと日本語能力を持っていることがわかります。

就労できる期間

在留資格「介護」は、ほかの在留資格に比べて永続的に働けるという点で有利です。ほかの資格では就労期間が3〜5年に制限されていますが、介護福祉士の資格を取得し、「介護」に変更すれば永続的な就労が可能です。

また、2020年度の介護福祉士国家試験では、全体の合格率が71%で、EPA枠の外国人の合格率は46.2%でした。介護特有の日本語の難易度が高く、介護福祉士の試験に受かるためには、受け入れ機関が試験対策を協力してあげる必要があります。

在留資格「介護」のメリット・デメリット

次は、在留資格「介護」のメリット・デメリットについて解説します。

  • メリット
  • デメリット

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

メリット

在留資格「介護」を持つ人材は、介護福祉士の資格を取得しているため、専門的な介護スキルと高度な日本語能力を兼ね備えています。彼らは、介護現場で利用者とコミュニケーションを取りながら働いており、語学面でも優れた対応ができます。

また、この資格には就労期間の制限がないため、更新を行えば長期にわたり安定して働けるのが特徴です。さらに、業務内容にも制限がないため、訪問介護や夜勤業務など幅広い業務に従事できる点も魅力です。

デメリット

デメリットとして挙げられるのは、在留資格「介護」が2017年9月に新設された比較的新しい制度であるため、卒業生が少ない点です。さらに、新型コロナウイルスの影響で約2年間新たな人材の入国が制限されていたため、資格を取得している外国人労働者の数が限られています。

このため、資格を持つ人材の競争率が高くなり、企業や施設が希望する人材を確保するのが難しいという問題があります。

在留資格「介護」の外国人を採用する方法

在留資格「介護」を持つ外国人を採用する際は、介護福祉士養成施設を2年以上修了した留学生が理想的です。競争率が高いため、地域の養成施設と連携して、学生時代からアルバイトや実習の場として受け入れましょう。

また、外国人雇用サービスセンターやハローワークを活用して、求人広告を出すのも効果的です。しかし、人数が限られているため、技能実習や特定技能で外国人を育て、介護福祉士試験合格まで支援するのも有効な方法となります。

なお、外国人労働者を雇うためのステップについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:外国人労働者を雇うための5つのステップ|メリット・デメリットや雇用できる条件をご紹介!

在留資格「介護」でよくある3つの質問

最後に、在留資格「介護」でよくある質問について紹介します。

  • 質問1.在留資格「介護」で従事できる業務は?
  • 質問2.在留資格「介護」は家族帯同が可能?
  • 質問3.介護業界の人手不足の状況とは?

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

質問1.在留資格「介護」で従事できる業務は?

主な業務には、介護者への「身体介助」や家事全般をサポートする「生活援助」、また家族への介護指導や介護用具の使い方の説明などが挙げられます。

これらの業務は、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、介護療養型医療施設などで実践できます。さらに、サービスの種類に制限がないため、デイサービスや訪問介護などの施設は問いません。

質問2.在留資格「介護」は家族帯同が可能?

在留資格「介護」は、家族を帯同できる数少ない在留資格の1つです。この資格を持つ外国人労働者は、配偶者や子どもを「家族滞在」の在留資格で日本に呼び寄せられます。

しかし、配偶者の両親や兄弟姉妹、親戚などを日本に呼び寄せるのは基本的に認められていないため、注意が必要です。家族の帯同が可能である点は、長期的に日本で生活して、安定して働きたい外国人労働者にとってメリットがあります。

質問3.介護業界の人手不足の状況とは?

日本における介護人材不足は深刻な課題となっており、今後もその傾向は続く見込みです。厚生労働省の「第8期介護保険事業計画」によれば、2019年度の介護職員数は約211万人でしたが、2023年度には約233万人、2025年度には約243万人、そして2040年度には約280万人が必要となります。

また、2019年度と比べると、2040年度までに約69万人もの介護職員を増やさなければなりません。2025年までは、毎年約5万人の増員が求められるという厳しい状況です。

参考:第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について|厚生労働省

まとめ

本記事では、在留資格「介護」の概要や介護分野で働ける在留資格の種類、メリット・デメリットをご紹介しました。

在留資格「介護」は、2017年9月に新たに設けられ、介護福祉士養成校を修了し、介護福祉士の資格を取得しているのが条件です。日本国内の介護施設などでの労働が認められ、高齢者や障がい者の支援が可能です。

介護分野で働ける在留資格には、在留資格「介護」やEPAにもとづく外国人介護福祉士、特定技能、技能実習があります。介護スキルの高さでは、在留資格「介護」が一番高く、次にEPA、特定技能、技能実習の順に位置づけられます。

さらに、在留資格「介護」は、ほかの在留資格に比べて永続的に働けるという点で有利です。在留資格「介護」のメリットとして、専門的な介護スキルと高度な日本語能力を持っており、就労期間の制限がありません。

一方、デメリットとして、比較的新しい制度であり、卒業生が少ないために、競争率が高い点にあります。このため、学生時代からアルバイトや実習の場として受け入れるのがおすすめです。

なお、株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、グローバル人材に対する総合的な生活支援を実施しており、外国人の受け入れにおける豊富な経験と知識を有しています。ご相談・お見積りはもちろん無料です。まずはお気軽にお問合せください。⇒株式会社グローバルヒューマニー・テックに相談する

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