特定技能「農業」は、農業分野の深刻な人材不足を補うための制度の1つとして、注目されており、耕種農業や畜産農業全般での受け入れが可能です。
本記事では、 特定技能「農業」の特徴や対応できる業務、受入れできる人材について解説しています。また、 特定技能「農業」を取得するための要件や採用方法についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。⇒株式会社グローバルヒューマニー・テックに相談する
特定技能「農業」とは?
特定技能「農業」は、2019年4月出入国管理及び難民認定法及び出入国管理関係法令等(入管法)の改正に伴い導入された新しい在留資格です。
この制度のもとでは、12分野において外国人労働者の受け入れが可能になります。その中で「農業」及び「漁業」分野では、特定技能外国人を派遣することが認められています。よって、当社は派遣事業と特定技能事業のノウハウを融合し、特定技能「農業」分野に注力しています。
日本の農業分野では本格的な人手不足が問題となっていますが、特定技能「農業」によって、作物の栽培や収穫などの農作業に従事する外国人労働者の受け入れが可能です。これにより、日本の農業従事者は必要な労働力を確保し、生産活動の維持や拡大を続けることが期待されています。
農業分野の現状と創設の背景
日本の農業分野は、後継者不足と高齢化の問題により過去10年間で100万人も労働力が減少し、農業経営の継続が困難になっているのが現状です。また、農業は固定費が多く、新規参入が難しいうえに、天候不順などの影響で収入にバラつきがあるため、若者から敬遠される傾向にあります。
これらの課題に対処するため、日本政府は「特定技能」を創設して外国人労働者の受け入れを拡大しており、令和5年10月末時点で、特定技能「農業」で働く外国人の総数は 22,924人にのぼり、全12業種のなかで、「農業」は在留している特定技能外国人の数が4番目に多い業種です。
参考:特定技能制度について
特定技能「農業」における傾向
出入国在留管理庁によると「特定産業分野別」での採用人数の割合を次のように公表しています。
- 飲食料品製造業:57,679人(29.6%)
- 素形材・産業機会・電気電子情報関連製造業:38,566人(19.8%)
- 介護:25,492人(13.1%)
- 農業:22,924人(11.8%)
- 建設:22,283人(11.4%)
- 外食業:11,474人(5.9%)
- その他:16,249人(8.4%)
特定技能制度は、人材不足が深刻化している業界に外国人労働者を受け入れるために創設された制度です。なかでも、特定技能「農業」は、技能実習生と比較し、より柔軟な雇用形態や業務範囲を可能にする特徴を持っています。
制度開始以来、特定技能「農業」の外国人労働者数は右肩上がりに増加しており、今後もこの傾向は続くと考えられています。
特定技能「農業」の特徴は5つ
次に、特定技能「農業」の特徴を5つご紹介します。それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.国内在住者から採用できる
技能実習生の場合、採用ルートは主に海外現地からの受け入れに限定されています。
しかし、特定技能では「国内で実施される試験の合格者」と「技能実習からの切り替え」の2つのルートがあります。そのため、海外からの受け入れが困難な状況でも、国内居住者を採用可能です。
2.受け入れ人数の上限がない
技能実習制度の場合、外国人労働者の数には制限があります。たとえば、夫婦二人で農業を営む小規模な農家では、技能実習生は最大2人までしか受け入れられません。
しかし、特定技能「農業」ではそのような制限はなく、事業者の必要に応じた数の外国人労働者を雇用できます。日本の農業分野では、労働人口の減少や高齢化が進んでおり、特に小規模な農家では人手不足が深刻な問題です。
特定技能「農業」は、このような状況にある農家がより多くの外国人労働者を受け入れられるメリットを提供しています。
3.日本語の能力は高いケースが多い
特定技能で働く外国人のなかには、日本での留学や技能実習を経験した人が多く、日本語能力が比較的高いケースが多くみられます。
そのため、特定技能「農業」の外国人労働者は、農業現場での日本人との橋渡しの役や、ほかの外国人労働者のサポートなど、コミュニケーションに関わる重要な役割を担うことも可能です。
このように、特定技能「農業」の外国人労働者は、農作業だけでなく、多文化間のコミュニケーションにおいても重要な役割を果たせます。
4.技能実習生よりも長期間働ける
技能実習制度では、労働者は原則として最大3年間の勤務が可能ですが、条件を満たせば一度帰国後さらに2年間勤務することが認められています。一方、特定技能「農業」では通算5年間在留でき、在留期間中に一時帰国する必要がありません。
また、特定技能「農業」では、農家の繁忙期や閑散期に応じて、半年ごとに帰国と勤務を繰り返し、最大で10年間働く選択肢があります。これは、特定技能「農業」の外国人労働者を農業分野での実戦力として招き入れるための大きなメリットです。
5.対応できる業務範囲が広い
特定技能「農業」では、専門的な農作業だけでなく、それに付随する業務も含めた広範な作業への従事が可能です。
これにより、特定技能「農業」で働く外国人労働者は、農作業のさまざまな業務に対応でき、農業経営に幅広く貢献でき、日本人と同様の業務に従事でき、農業現場の柔軟な人材活用が可能です。
特定技能「農業」で対応できる業務は2つ
次に、特定技能「農業」で対応できる業務について解説します。
- 耕種農業全般
- 畜産農業全般
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.耕種農業全般
耕種農業は、田畑に種をまき、作物を育てるスタイルの農業に向いており、具体的には「施設園芸」や「畑作・野菜」、「果樹」の栽培を指します。また、業務内容に栽培管理が含まれていなければなりません。
農業分野における基本的かつ重要な業務であり、特定技能「農業」の外国人労働者はこれらの業務に従事ができます。
2.畜産農業全般
畜産農業は、家畜を飼育して肉や卵、乳製品などを生産する農業分野で、飼養管理が業務内容に含まれていなければなりません。家畜の健康や食事、生産環境の管理が求められます。
畜産農業は、耕種農業とは異なるスキルや知識が必要とされるため、専門性が高い業務であるといえます。また、基本的には「耕種農業全般」と「畜産農業全般」の業務を並行することは認められていません。
特定技能「農業」で受入れできる人材
特定技能「農業」で受け入れできる人材は、基本的に経験者が選ばれます。この制度は「人手不足の解消」に焦点を当てているため、即戦力として活躍できる人材を対象としています。
ただし、以下の条件を満たしておかなければなりません。
- 年齢が18歳以上
- 技能実習2号を良好に修了しているか、技能試験と日本語試験に合格している
また、日本語能力も一定のレベルを満たす必要があります。これにより、特定技能「農業」の外国人労働者は日本語をある程度理解でき、即戦力として農業業務に従事することが期待されます。
特定技能1号「農業」を取得するための要件は2つ
次に、特定技能1号「農業」を取得するための要件について解説します。
- 農業技能測定試験と日本語試験に合格する
- 技能実習2号から移行する
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.農業技能測定試験と日本語試験に合格する
特定技能「農業」の在留資格を取得するには、農業技能測定試験と日本語能力試験の両方に合格しなければなりません。農業技能測定試験は、畜産と耕種の技能分野に分けられ、約60分で70問程度のテストが実施されます。
この試験にはリスニングテストや学科試験、実技試験が含まれています。また、日本語能力試験ではN4レベルの合格が必要です。
引用:N1~N5: 認定 ( にんてい ) の 目安 ( めやす )
これは日常会話レベルの日本語力を測るもので、一般的な日本語を使って書かれた文書の理解やゆっくり話される会話の理解が可能でなければなりません。
2.技能実習2号から移行する
技能実習2号は1993年に始まった技能実習制度で、一定期間の実習を経て特定技能の要件を満たすことで在留資格の取得が可能です。
特定技能への移行には技能実習2号の実習を完了し、実習中の資格区分や作業内容が特定技能1号の区分と一致する必要があります。このプロセスを通じ、農業分野での高度な技能を身に付けることで、日本の労働市場への貢献につながります。
特定技能「農業」外国人を採用後の対応
次に、特定技能「農業」外国人を採用する方法について解説します。
- 特定技能外国人支援を実施する
- 農業特定技能協議会に入会する
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.特定技能外国人支援を実施する
特定技能「農業」の外国人労働者を採用する際は、業務支援や日常生活援助に関する支援が必要です。これらの支援は、企業自身で実施することも可能ですが、はじめての採用の場合は「登録支援機関」へ委託するケースが一般的です。
また、過去2年間に外国人労働者を受け入れた経験がない場合や、生活相談に対応できる役員・職員が社内にいない場合も委託が必要になります。
一方、支援実施体制や計画の策定などの条件をクリアできる企業は、支援を委託するか、自社で実施するかを選択できます。なお、登録支援機関については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【担当者必見】登録支援機関とは?特定技能制度における支援内容やメリット、選ぶ際のポイントを解説!
2.農業特定技能協議会に入会する
引用:「農業特定技能協議会」入会申込みフォーム(法人用):農林水産省
特定技能「農業」分野で外国人労働者を採用する場合、事業者は雇用後4か月以内に農業特定技能協議会に加入する必要があります。加入していない場合、特定技能外国人の受入れができなくなるため注意が必要です。
この加入は協議会のホームページから実施でき、会費は無料です。また、協議会への参加後は、協議会が実施するさまざまな活動への協力が求められます。協議会への参加は、外国人労働者の適切な受け入れと支援のための重要なステップです。
特定技能「農業」でよくある3つの質問
最後に、特定技能「農業」でよくある質問について紹介します。
- 質問1.時期ごとに別の農場で働くことは可能?
- 質問2.造園業で特定技能の受入れは可能?
- 質問3.特定技能「農業」勉強用のテキストや試験問題のダウンロード先は?
それぞれについて詳しくみていきましょう。
質問1.時期ごとに別の農場で働くことは可能?
特定技能「農業」分野での雇用には「直接雇用」と「派遣雇用」の2つの方法があります。直接雇用の場合、外国人労働者は時期ごとに異なる農場で働くことが可能です。
ただし、時期ごとに働く農場とその都度雇用契約を締結したうえで、出入国在留管理局から許可を受けなくてはなりません。一方、派遣雇用では派遣元と派遣先農場との間で派遣契約を結び、出入国在留管理局からの許可が必要となります。
派遣先が変更される場合、新たな派遣先についても出入国在留管理局への届出が必要です。このように、異なる農場での就労は可能ですが、適切な手続きと許可が必要です。
質問2.造園業で特定技能の受入れは可能?
造園業での特定技能外国人の受け入れは原則として不可であるものの、例外的な場合があります。
この例外は、耕種農業全般(栽培管理、出荷収、選別など)を主な業務としている場合に、耕種農業に付随し、日本人従業員が通常業務として実施している造園作業においてのみ従事が認められています。
あくまでも付随的なものであり、主たる業務は耕種農業全般である場合のみ、特定技能外国人が造園業に従事することが可能です。
質問3.特定技能「農業」勉強用のテキストや試験問題のダウンロード先は?
特定技能「農業」の勉強用テキストや試験問題は、農業技能測定試験の公式ホームページから無料でダウンロードできます。
当テキストには日本の農業分類や植物の仕組み、農機の使用方法、出荷や収穫、施設園芸や果樹までが含まれています。これらは特定技能として即戦力になるための基礎知識を総合的にカバーしており、効果的な学習ツールです。
まとめ
本記事では、特定技能「農業」の特徴や対応できる業務、受入れできる人材、特定技能「農業」を取得するための要件や採用方法について解説しました。
特定技能「農業」は、農業分野の深刻な人材不足を補うための制度の1つとして注目されている制度です。農業分野での受け入れ人数も増加傾向にあり、技能実習生とは異なる利点も多くあるため、特定技能外国人の雇用を検討してみてはいかがでしょうか。
株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、グローバル人材に対する総合的な生活支援を実施しており、特定技能外国人の受入れにおける豊富な経験と知識を有しています。
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