外国人労働者を雇用する際に、社会保険に加入する必要があるのか​​知りたい方もおられるのではないでしょうか。健康保険や労働保険などの制度は、外国人労働者にとっても大切な保障となり、安心して働ける環境を整える役割があります。

本記事では、外国人労働者の社会保険への加入要否や日本における健康保険、労働保険の概要をご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

編集部

外国人労働者は社会保険への加入が必要?

外国人労働者が日本で働く場合、一定の条件を満たせば、日本人と同様に社会保険への加入が義務となります。社会保険は、労働者が働くうえで遭遇するリスクや、健康や生活の安定を支える公的な保障制度です。

たとえば、「労災保険」「雇用保険」「健康保険」「年金保険」などの各種保険が対象で、国籍に関係なく条件を満たす労働者は加入する必要があります。加入要件は、企業の形態や規模、労働時間、給与額などによって異なるため注意が必要です。

なお、外国人採用における注意点については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:外国人採用における注意点は7つ|採用動向やメリット・デメリット、採用ステップをご紹介!

日本における健康保険(医療保険)の制度

次は、日本における健康保険(医療保険)の制度について解説します。

  • 健康保険
  • 国民健康保険

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

健康保険

企業で働く労働者やその家族は、健康保険に加入する必要があり、全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合などが代表的な保険制度です。法人の場合、事業主のみであっても強制的に加入義務があります。

一方、個人事業は法定16業種に該当しており、従業員が5人以上の場合は強制的に加入しなければなりません。また、健康保険の対象者には、常勤役員や正社員、条件を満たすアルバイトも含まれています。

しかし、条件を満たさないアルバイトや報酬無しの役員代表、国民健康保険組合に加入して該当認証を受けている人、家族の扶養へ加入している人は加入対象外です。外国人も日本の労働者と同じ条件で扱われます。

国民健康保険

日本では国民皆保険制度により、すべての国民が医療保険に加入しなければなりません。健康保険に加入しない外国人労働者や家族の扶養に入らない場合、国民健康保険への加入が必要です。

さらに、保険者は市町村または国民健康保険組合となり、どちらに属するかは状況に応じて異なります。市町村運営の保険料は年収にもとづき、家族が加入する場合も負担が発生します。

一方、国民健康保険組合は、業種ごとの団体により保険料が定められ、属性による区分に応じた金額が設定されているのが特徴です。

日本における労働保険の制度

次は、日本における労働保険の制度について解説します。

  • 雇用保険
  • 労災保険

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

雇用保険

雇用保険は、労働時間が週20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがある場合に加入が必要です。外国人労働者も、日本人と同じ基準で適用されますが、昼間に学校に通う学生やワーキングホリデーの場合は除外されます。

しかし、アルバイトとして外国人を雇用する際には、「雇入れ・離職に係る外国人雇用状況通知書」をハローワークへ提出しなければなりません。また、雇用保険では、失業時の「求職者給付」や「育児休業給付金」など、多くの給付が受けられます。

労災保険

労災保険は、労働者が業務中や通勤中に事故や病気に遭った場合に適用される保険で、日本人と外国人の区別なくすべての労働者が対象です。アルバイトやパートを含むすべての雇用形態に対して、事業主は労災保険への加入が義務となります。

また、労災保険の給付には、治療費を負担する療養補償給付や、仕事ができない場合の休業補償給付、障害が残った際の傷害補償給付などがあります。

日本におけるその他の保険制度

次は、日本におけるその他の保険制度について解説します。

  • 介護保険
  • 年金保険

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

介護保険

外国人労働者も、日本人と同様に介護保険に加入しなければなりません。この制度は、高齢者や要介護状態にある方々を支援するために設けられたものです。

介護保険制度については、厚生労働省が多言語で案内リーフレットを用意しており、外国人労働者が理解しやすいよう配慮されています。こうしたリーフレットを提供すれば、外国人労働者にも制度の内容や給付の種類を明確に伝えられます。

参考:介護保険制度について(40歳になられた方(第2号被保険者)向け:令和6年3月版)

年金保険

年金保険には国民年金と厚生年金保険があり、外国人労働者も日本人と同様にこれらへの加入が義務づけられています。法人に勤めており、一定の条件を満たす場合は厚生年金保険に加入しますが、適用除外者に該当する場合は国民年金に加入しなければなりません。

また、厚生年金は、国民年金とあわせて給付されるため、将来の生活保障として手厚い内容となっています。一方、年金保険制度は、日本において外国人労働者にも適用されるため、安定した老後の支えとなります。

社会保険 外国人でよくある3つの質問

最後に、社会保険 外国人でよくある質問について紹介します。

  • 質問1.社会保障協定とは?
  • 質問2.外国人が退職・解雇した場合の社会保険手続きは?
  • 質問3.脱退一時金とは?

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

質問1.社会保障協定とは?

外国人労働者が日本で働く際には、日本の社会保障制度に加入しなければなりません。この際に「保険料の二重負担」や「年金の掛け捨て」が問題になる場合があり、これらの問題を解決するために、社会保障協定が締結されています。

社会保障協定は、二国間で加入すべき制度を調整して、保険料の二重負担を防ぐとともに、年金加入期間を通算できるようにしているのが特徴です。この協定を結んでいる国であれば、外国人労働者も安心して社会保障に加入できます。

質問2.外国人が退職・解雇した場合の社会保険手続きは?

外国人労働者が退職や解雇となった場合、日本人と同様の手続きが必要です。まず、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」や「雇用保険被保険者資格喪失届」、「外国人雇用状況届出書」を提出します。

解雇の場合、記録や内容をしっかりと残して、外国人労働者に誤解がないよう丁寧に説明しましょう。外国人従業員は、在留資格にも影響を受けるため、解雇を回避する方法を可能な限り実施しなければなりません。

質問3.脱退一時金とは?

脱退一時金は、外国人が日本から帰国した際に、過去に支払った年金保険料の一部を払い戻す制度です。この制度により、年金受給資格を得る前に帰国する外国人労働者でも、一定の金額を請求できます。

申請は、日本を離れて住所を失った日から2年以内に行う必要があり、帰国後に支給されます。この脱退一時金の制度は、短期間しか滞在しない外国人にとって負担軽減の一助となるため、理解しておきましょう。

まとめ

本記事では、外国人労働者は社会保険への加入が必要か、日本における健康保険や労働保険の概要をご紹介しました。

外国人労働者が日本で働く場合、一定の条件を満たすと、日本人と同様に社会保険への加入が義務となります。社会保険は、労働者が働くうえで遭遇するリスクや、健康や生活の安定を支える公的な保障制度です。

健康保険には、企業に勤める場合の「健康保険」と、自営業者や無職者向けの「国民健康保険」があり、どちらかに加入しなければなりません。また、労働保険には、一定条件を満たした場合に加入する「雇用保険」とすべての労働者が加入する「労災保険」があります。

さらに、高齢者や要介護状態にある方々を支援する「介護保険」や、将来の生活保障である「年金保険」の適用も外国人労働者は対象です。このような社会保険制度は、多言語で外国人労働者が理解しやすいよう配慮されている案内リーフレットを用いて丁寧に説明しましょう。

なお、株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、グローバル人材に対する総合的な生活支援を実施しており、外国人の受け入れにおける豊富な経験と知識を有しています。ご相談・お見積りはもちろん無料です。まずはお気軽にお問合せください。⇒株式会社グローバルヒューマニー・テックに相談する

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