【担当者必見】特定技能で実施する生活オリエンテーションとは?具体的な内容や注意点を詳しく解説します!

生活オリエンテーションは、特定技能外国人に対し、日本での生活や労働に必要な情報を提供する義務的な支援活動の1つです。特定技能外国人を受け入れる企業は、日本での生活に関する重要な知識をしっかりと身につけられるようにサポートしなければなりません。

本記事では、生活オリエンテーションの具体的な内容や実施する際の注意点について解説します。また、よくある質問についても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

編集部

特定技能で実施する生活オリエンテーションとは?

特定技能で実施する生活オリエンテーションは、新たに入社した特定技能外国人に対し、日本での生活や労働に必要な情報を提供する義務的な支援活動です。

このオリエンテーションでは、医療制度や税金、年金、交通ルール、災害時の対応など、日本で生活するうえで知っておくべき基本的な情報が伝えられます。

これらの情報は日本で安全に生活するためにも非常に重要であり、母国語での説明が必要です。また、事前ガイダンスと混同されがちですが、事前ガイダンスは主に雇用契約の内容に焦点を当てているのに対し、生活オリエンテーションは日本での具体的な生活情報に重点を置いています。

1.実施形式

生活オリエンテーションの実施においては、テレビ電話やZOOMを使用したオンライン形式、またはDVDなどの動画視聴による方法が可能です。

重要なポイントは、特定技能外国人が内容を理解できる言語で説明が実施されており、生活オリエンテーションに関する質問や問い合わせに対して、適切に受け答えができるような体制が整っている点です。

2.実施時間

特定技能外国人が、日本での生活に関する重要な知識をしっかりと身につけられるよう十分な時間の確保が必要であり、入管が定める基準で「少なくとも8時間以上」とされています。

また、技能実習2号や留学生から特定技能への資格変更を実施する場合や、就業先や生活環境に変更がない場合でも、「少なくとも4時間以上」のオリエンテーションを受けなくてはなりません。

参考:「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」

生活オリエンテーションの具体的な内容

次に、生活オリエンテーションの具体的な内容について解説します。

  • 生活に関する情報
  • 必要な届出や手続き
  • 相談や苦情の申出を行うための連絡先
  • 防災や防犯に関する情報
  • 医療体制や医療機関に関する情報
  • 法的保護に関する情報

それぞれについて詳しくみていきましょう。

生活に関する情報

まずは、生活に関する情報について詳細に解説していきます。

1.金融機関の利用方法

金融機関での口座開設や入出金、振り込みの方法、利用可能な時間帯、ATMの使用方法や手数料に関して説明します。また、日本を出国する際に口座を閉鎖する手続きについても指導が必要です。

多くの外国人労働者が母国にいる家族への送金を必要としているため、送金の方法についても詳しく説明し、日本での金融取引において困らないようにサポートしてあげましょう。

2.医療機関の利用方法

病院の選び方や受診の手順について説明し、職場や住居の近くにある医療機関の情報を共有します。ここで重要なのは、医療機関を訪れる際は必ず健康保険証を持参しなければならないという点を伝えることです。

健康保険証を忘れた場合は、治療費を全額自己負担しなければならない点を強調しましょう。さらに、アレルギーや宗教上の理由で特定の治療を受けられない場合は、その旨を医療機関に伝えることの重要性についても指導してください。

3.交通ルール

歩行者や自転車、オートバイ、自動車のそれぞれに適用されるルールを理解し、安全に移動するための指導を実施します。たとえば、歩行者は歩道がない場合は右側を歩くことや車両は常に左側通行であることなどが含まれます。

自転車に関しては、損害賠償責任保険への加入が必要な地域があるため、その確認と加入方法を案内してください。自動車やオートバイを運転する際は運転免許が必須であることや、取得方法についても説明しておきましょう。

さらに、横断歩道や踏切の安全な渡り方、信号機の色に従った行動など、基本的な交通ルールの遵守が重要である点を伝えてください。

4.公共交通機関の利用方法

公共交通機関の使い方についても具体的に説明します。たとえば、通勤や日常生活で必要となる電車やバスの乗り方、路線の選び方、目的地までの行き方を詳しく案内します。

さらに、通勤定期券の購入方法や、Suicaのような交通系ICカードの使い方も説明しましょう。これらのカードがどのように機能するのか、チャージ方法や利用可能な場所についても触れ、日本の公共交通システムを効率的に利用できるようサポートしてください。

5.生活必需品の購入方法

寮や職場の周辺にあるスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア、家電量販店の場所について説明し、これらの店舗での買い物の仕方を詳しく紹介します。

また、自動精算機の操作方法も重要なポイントであり、現金やクレジットカード、電子マネーの使用方法を含めて指導してください。これらを理解することにより、日本での日常生活に必要な物品を自分で効率的に調達できるようになります。

6.生活マナー

ゴミの分別方法や出し方、収集日、粗大ごみの処理方法などが含まれます。地域によって異なるルールを正しく理解し、遵守することが地域社会での円滑な生活を送るために不可欠です。

さらに、夜間の騒音に関するマナーや公共の場での喫煙規制についても説明します。近隣住民への配慮として、大声で騒がないこと、指定された場所以外での喫煙を避けることは、共に生活する地域社会での重要なルールです。

7.日本の法律に関する情報

日本では銃や刀剣類の所持が厳しく制限されており、大麻や覚せい剤などの違法薬物の所持は犯罪にあたることを明確に説明します。

また、在留カードの携帯は法律で義務付けられており、不携帯や他人への貸し出しは罰則の対象となることも強調して伝えておきましょう。

母国で許可されている行為が日本では禁止されている場合もあるため、日本の法律やルールに対する正確な理解と遵守が不可欠です。

8.災害情報の入手方法

災害が発生した際に迅速かつ正確な情報を得るために、事前に役立つウェブサイトやアプリケーションの利用方法を紹介します。とくに、母国語で災害情報が提供できるリソースを共有することで、非常時でも必要な行動が取れるようになります。

日本は地震や台風などの自然災害が頻繁に起こる国であるため、これらの情報源を知っておくことは、安全を確保し、適切な対応を取るうえで非常に重要です。

必要な届出や手続き

次に、必要な届出や手続きについて解説します。

1.所属機関等に関する届出

特定技能外国人は、自身が所属する受入れ機関に関して発生する以下の変更を14日以内に関連機関へ適切に届け出る責任があります。

  • 受入れ機関の名称や所在地に変更があった場合
  • 機関が消滅したとき(倒産・事業所の閉鎖など)
  • 雇用契約が終了した場合
  • 新たな受入れ機関と雇用契約を結んだ場合

この手続きは、特定技能外国人の在留資格の維持に直結する重要なものであり、適切な報告がなされないと不利益を受ける可能性があります。そのため、自身の所属状況に変化があった際には、速やかな届出が必要である点を伝えておきましょう。

2.住居地に関する届出

特定技能外国人は、日本での居住地に変更があった場合、それを速やかに届け出る義務があります。具体的には、日本に入国した後、在留資格が変更された場合または転居した際には、それぞれの事象が発生した日から数えて14日以内に最寄りの市区町村役場へ届出を提出しなければなりません。

この届出を怠り、合理的な理由なく90日以上遅延した場合、在留資格が取り消される可能性があるため、注意が必要です。

3.社会保障および税に関する手続き

特定技能外国人は、日本での生活において社会保障および税に関する手続きを適切に実施する必要があります。これらの手続きを怠ると、在留資格に影響が出る場合があるため、注意してください。

  • 社会保障に関する手続き
    健康保険や厚生年金保険への加入が必要で、保険料は原則として給与から天引きされる。国民健康保険や国民年金に該当する場合、離職や職場変更時には自身で手続きが必要

  • 税に関する手続き
    所得税や住民税は原則として給与からの特別徴収により納付される。納税義務が発生する期間や、離職・転職後の納税方法について理解し、適切な手続きを実施する

  • その他
    マイナンバー制度について理解し、個人番号の通知方法やマイナンバーカードの取得方法を理解する。マイナンバーカードは行政手続きの際に有効な身分証明書として利用でき、コンビニエンスストアでの証明書発行など、さまざまなサービスに活用できる

4.そのほかの行政手続き

自転車を利用する場合は防犯登録が必要です。この登録は自転車の盗難防止に役立ち、万が一盗難や撤去が発生した際には、迅速に対応できるようになります。

このような行政手続きは、生活の安全性と秩序を保つために欠かせません。とくに、国民健康保険や国民年金の手続きでは、外国人自身が直接関わる必要があるため、支援機関の同行と補助が推奨されています。

相談や苦情の申出を行うための連絡先

特定技能外国人が抱える問題や疑問に対し、相談や苦情の申し出をするための連絡先を明確に提供しなければなりません。これには以下のような情報が含まれます。

相談や苦情の申し出に対応する担当者の連絡先

  • 支援担当者の氏名
  • 支援担当者の電話番号、メールアドレス

相談や苦情の申し出ができる国や地方公共団体の機関の連絡先

  • 地方出入国在留管理局:入国や在留に関する相談
  • 労働基準監督署:労働条件や労働環境に関する相談
  • ハローワーク:職業相談や失業給付に関する相談
  • 法務局・地方法務局:人権に関する問題の相談
  • 警察署:犯罪被害や交通事故の相談
  • 市区町村役場:住民税や社会保険に関する相談
  • 弁護士会、日本司法支援センター(法テラス):法的トラブルの相談
  • 大使館・領事館:パスポートの問題などの相談

防災や防犯に関する情報

地震や津波、台風といった自然災害への備えとして、適切な対応策や自己防衛の手段について説明します。火災のリスクを減らすためには、タバコの不始末やコンロ、ストーブの安全な使用方法を理解しなければなりません。

また、緊急時に備えて、警察(110番)や消防(119番)、大使館や領事館、そして医療機関への連絡方法を知っておくことが、安全を確保するうえで極めて重要です。

さらに、気象情報のチェックや避難指示・勧告を適切に理解し、迅速に行動することが、災害時のリスクを最小限に抑えるポイントです。

医療体制や医療機関に関する情報

緊急時に安心して医療サービスを受けられるように、生活一般に関わる事項と共に、通訳サービスが提供されている病院や連絡先などの情報提供が必要です。

この情報には、外国人患者が十分に理解できる言語で医療を受けられる医療機関の所在地と連絡先、医療通訳サービスの導入状況、通訳人の雇入れ費用をカバーする民間医療保険への加入案内が含まれます。

これらの情報により、病気やけがで医療機関を利用する際の金銭的・心理的負担が軽減でき、不安なく医療サービスを受けられる体制を整えられます。

法的保護に関する情報

出入国管理や労働法規に関する違反を発見した際の対応方法や、法的な問題に直面したときにどのように行動すべきかについての情報提供が不可欠です。これには、適切な法的アドバイスを提供する機関や専門家への連絡方法も含まれます。

外国人労働者が自身の権利を守り、不当な扱いを受けた際に適切に対処できるよう、法的保護に関する具体的な情報と支援体制の整備が重要です。

特定技能で生活オリエンテーションを実施する際の3つの注意点

次に、特定技能で生活オリエンテーションを実施する際の注意点について解説します。

  • 理解できる言語で実施する必要がある
  • 必要に応じて手続きに同行する
  • 最低でも8時間以上の実施が義務付けられている

それぞれについて詳しくみていきましょう。

1.理解できる言語で実施する必要がある

生活オリエンテーションは、特定技能外国人が日本で生活していくうえで不自由なく過ごせるように、必要な情報を提供することが目的です。

このオリエンテーションの効果を発揮するためには、当該外国人が十分に理解できる言語での実施が求められます。必要に応じて母国語やそのほかの当該外国人が理解できる言語にて実施するようにしましょう。

登録支援機関によっては、複数の言語での生活オリエンテーションに対応している場合があるため、必要に応じて当該外国人の母国語に対応している登録支援機関への依頼を検討してください。

2.必要に応じて手続きに同行する

公的機関への各種届出に際しては、口頭で説明するだけではなく、関係窓口に必要に応じて同行し、書類作成や手続きの補助を担うことが大切です。

とくに、離職時の国民健康保険や国民年金の手続きにおいては同行することが望ましいとされているため、これらの手続きに同行することの重要性を認識し、適切に対応するようにしてください。

3.最低でも8時間以上の実施が義務付けられている

特定技能外国人が内容を十分に理解し、不安なく生活を始められるようにすることが目的であるため、納得できるまで丁寧に説明しましょう。

動画の視聴やテレビ電話を用いた生活オリエンテーションの実施も認められていますが、特定技能外国人が疑問を持ったり理解できないポイントについては、質問しやすく、すぐに回答できる体制を整えていなければなりません。

また、同一事業所の技能実習生が特定技能に変更して業務を継続するような場合は、時間の短縮が可能です。ただし、その場合も4時間以上は行わなければ、適正な生活オリエンテーションが行われたと認められないケースがあります。

特定技能の生活オリエンテーションでよくある3つの質問

最後に、特定技能の生活オリエンテーションでよくある質問について紹介します。

  • 質問1.自社で実施するリソースが足りない場合の対処法は?
  • 質問2.生活オリエンテーション実施の参考になる資料はありますか?
  • 質問3.実施後に書類提出などの手続きは必要?

それぞれについて詳しくみていきましょう。

質問1.自社で実施するリソースが足りない場合の対処法は?

自社で4時間や8時間をかけて生活オリエンテーションを実施するための時間がない場合、登録支援機関への委託が推奨されます。生活オリエンテーションの実施だけでなく、公的機関への手続き同行や定期面談の実施や報告など、そのほかの支援業務も一括して委託が可能です。

もちろん、一定の条件の下で一部業務の委託も選択できます。もし、総合的な支援が必要な場合は、登録支援機関への委託も検討してみてください。

なお、登録支援機関についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【担当者必見】登録支援機関とは?特定技能制度における支援内容やメリット、選ぶ際のポイントを解説!

質問2.生活オリエンテーション実施の参考になる資料はありますか?

出入国在留管理庁ホームページ内に掲載された「外国人生活支援ポータルサイト」や「生活・就労ガイドブック」は、外国人の安全・安心のために必要な基礎的情報を提供しています。

これらの資源は、日本での生活や就労に役立つ情報が豊富に含まれており、入管が発行する運用要領にも参照するようにとの記載があります。これらのガイドを活用し、特定技能外国人の生活オリエンテーションを効果的に実施しましょう。

参考:外国人生活支援ポータルサイト | 出入国在留管理庁
参考:生活・就労ガイドブック | 出入国在留管理庁

質問3.実施後に書類提出などの手続きは必要?

生活オリエンテーション実施後は、「生活オリエンテーションの確認書(参考様式5-8号)」を特定技能外国人の署名を得たうえで記録しておかなければなりません。さらに、この書類は、特定技能所属機関(受け入れ企業)での保管が求められています。

また、登録支援機関に支援を委託していた場合、その登録支援機関が書類の作成および保管を担当します。重要なのは、書類の作成と保管には義務があるものの、これらを出入国在留管理庁に提出する必要はないという点です。
参考:特定技能所属機関からの定期届出に関連してお問合せの多い事項について(Q&A)|出入国在留管理庁

まとめ

本記事では、生活オリエンテーションの具体的な内容や実施する際の注意点、よくある質問について紹介しました。

生活オリエンテーションは、特定技能外国人に対し、日本での生活や労働に必要な情報を提供する義務的な支援活動の1つであり、最低でも8時間以上の実施が義務付けられています。

また、盛り込むべき内容も多岐に渡るため、初めて特定技能外国人を受け入れる企業が単独で実施するのは難しいかもしれません。このような場合は、登録支援機関に支援を委託するのがおすすめです。

株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、グローバル人材に対する総合的な生活支援を実施しており、特定技能外国人の受入れにおける豊富な経験と知識を有しています。ご相談・お見積りはもちろん無料です。まずはお気軽にお問合せください。⇒株式会社グローバルヒューマニー・テックに相談する

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