人手不足の解消策として外国人労働者の雇用を進める企業が増加していますが、日本人を雇用する場合とは異なり、出入国管理及び難民認定法(入管法)をはじめとする外国人特有の法律や手続きが存在します。これらの法律を深く理解し、適正な雇用管理を行わなければ、不法就労助長罪などの重い罰則を科せられるリスクが生じます。

この記事では、外国人労働者を雇用する企業が必ず遵守すべき主要な3つの法律の概要と、労働条件の平等性や在留資格の確認など、企業が具体的に守るべき4つの重要事項を分かりやすく解説します。

外国人労働者に適用される主な3つの法律

外国人労働者を雇用する際に、企業が特に意識し、遵守しなければならない法律は多岐にわたりますが、ここでは重要度の高い3つの法律について、概要と適用範囲を解説します。

1.労働基準法(均等待遇の原則)

労働基準法は、賃金や労働時間、その他の労働条件に関する最低基準を定めた法律です。正社員や契約社員、アルバイトなど、雇用形態や国籍に関わらず、すべての労働者に適用されます。

労働基準法第3条で定められている均等待遇の原則において、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならない」と規定されています。

このため、外国人労働者に対しても日本人労働者と同じ職務内容であれば、国籍を理由に賃金や労働条件の差別を厳しく禁止されている点が特徴です。また、割増賃金の支払い義務や強制労働の禁止についても、日本人と同様に適用されます。

参考:労働基準法|e-GOV法令検索

2.出入国管理及び難民認定法(入管法)

出入国管理及び難民認定法(入管法)は、外国人の入国・在留について定めた法律であり、日本で就労する外国人の在留資格や活動範囲について定めています。この法律は、外国人労働者を雇用する企業にとって、労働基準法と並ぶ大切な法律の1つです。

企業は外国人労働者を雇用する際、その外国人が持っている在留資格で、就労が認められているかを必ず確認しなければなりません。在留資格外の活動や、就労が認められていない在留資格の外国人を雇用すると、不法就労にあたります。

不法就労をさせた企業側も不法就労助長罪に問われ、重い罰則の対象となるため、在留カードによる在留資格の確認は企業の義務です。

参考:出入国管理及び難民認定法|e-GOV法令検索

3.労働施策総合推進法(外国人雇用状況の届出)

労働施策総合推進法は、労働者の雇用の安定や職業生活の充実などを目的とした法律です。この法律にもとづき、事業主には外国人雇用状況の届出が義務づけられています。

企業が新たに外国人を雇い入れた場合や、雇用している外国人が離職した場合には、氏名や在留資格、在留期間などをハローワークへ届け出ることが義務づけられています。この届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合は、「罰則(30万円以下の罰金)」の対象です。

この届出は、外国人の雇用状況を国が把握して、雇用管理の改善や再就職支援につなげるために必要な役割を果たします。

参考:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律|e-GOV法令検索

外国人労働者の雇用で企業が守るべき4つの重要事項

外国人労働者の雇用を適正に行うためには、先ほど述べた法律の内容を遵守するための具体的な行動が求められます。ここでは、企業が特に注意して守るべき4つの重要事項を解説します。

1.労働条件は国籍にかかわらず平等に扱う

労働基準法により、外国人労働者に対しても、日本人労働者と同様に平等な労働条件を適用しなければなりません。賃金や労働時間、そのほかの労働条件において、国籍を理由とした差別的取扱いは禁止されています。

具体的には、日本人と同じ仕事内容であれば、最低賃金はもちろん、賃金額そのものも同等に設定する必要があります。また、残業や休日出勤に対する割増賃金の支払い、有給休暇の付与についても、日本人と同様の基準で適用しなければなりません。

外国人だからという理由で不当に低い賃金を設定したり、不利益な労働条件を押しつけたりすると法律違反となります。

2.就労可能な在留資格と在留期間を必ず確認する

入管法を遵守するため、企業は外国人労働者を雇い入れる前に、その外国人が日本で就労できる在留資格を持っているか、在留期間がいつまでかを在留カードで必ず確認する義務があります。

就労が認められていない短期滞在、留学などの在留資格の外国人を雇い入れたり、許可された範囲を超えて働かせたりすると、不法就労助長罪に問われます。また、留学生が持つ「資格外活動許可」も、原則として週28時間以内という制限があるため、企業側が超過させないよう厳しく管理しなければなりません。

雇用後も在留期間の更新状況を定期的に確認して、在留期間が切れた状態で働かせないように徹底した管理体制を築く必要があります。

なお、外国人労働者の勤務時間の制限については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:外国人労働者に勤務時間の制限はある?週28時間を守らなかった場合の罰則やよくある質問もご紹介!

3.労働保険や社会保険への加入を適正に行う

外国人労働者であっても、日本の労働者と同様に、労働保険(労災保険、雇用保険)や社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入が義務づけられています。

  • 労災保険

雇用形態や在留資格、就労期間に関わらず、労働者を1人でも雇用しているすべての事業所に加入が義務づけられている

  • 雇用保険

所定の要件を満たす労働者(原則として、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある者など)であれば、外国人労働者も加入対象となる

  • 健康保険と厚生年金保険

常時労働する場合であれば、国籍に関係なく被保険者となるため、企業は適正な手続きを行う必要がある

外国人労働者の適正な雇用は、企業のコンプライアンスを維持する上で非常に重要です。

4.外国人雇用状況の届出を期限内にハローワークへ提出する

労働施策総合推進法に基づき義務づけられている外国人雇用状況の届出を、定められた期限内に正確にハローワークへ提出しなければなりません。この届出は、外国人労働者の雇入れと離職の際にも必要です。

届出を怠ると罰則が科せられるだけでなく、国による適切な雇用管理の指導や、離職した外国人への再就職支援などの機会を失うことにもつながります。届出の対象となる外国人の範囲や、雇用保険の被保険者か否かによって使用する様式や届出期限が異なります。

このため、厚生労働省の情報を確認して、届出の正確性と期日の厳守を徹底しなければなりません。

なお、外国人雇用状況届出書の詳細については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

関連記事:外国人雇用状況届出書とは?提出方法や記載方法、注意点まで詳しく解説します!

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外国人労働者の法律でよくある3つの質問

最後に、外国人労働者に関する法律でよくある質問を3つご紹介します。それぞれの内容について詳しくみていきましょう。

質問1. 外国人労働者に適用されない日本の法律はありますか?

外国人労働者は、原則として日本の労働者と見なされるため、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法などの労働関係法令は、国籍に関係なくすべて適用されます。

外国人労働者にのみ適用される特定の法律としては、日本への入国・在留・就労を規定する出入国管理及び難民認定法(入管法)や、雇用状況の届出を義務づける労働施策総合推進法などがあります。

これらの法律の規制や義務は、日本人労働者を雇用する際には発生しないため、企業はこれらの外国人特有の法律について、特に深く理解し遵守しなければなりません。

質問2. 在留カードの確認を怠った場合、どのような罰則がありますか?

外国人労働者を雇用する際、企業が在留カードの確認を怠り、結果として不法就労となる外国人を雇い入れた場合、企業は不法就労助長罪に問われる可能性があります。

不法就労助長罪に対する罰則は5年以下の懲役または500万円以下の罰金と、非常に重いものです。これは、たとえ企業がその外国人が不法就労者であると知らなかった場合でも、在留カードの確認義務を怠った過失があれば、処罰を免れないとされています。

そのため、外国人労働者の雇用に際しては、在留カードの原本を提示してもらい、記載内容を必ず確認するようにしてください。

質問3. 技能実習生にも最低賃金法は適用されますか?

技能実習生は「労働者」として雇用されるため、最低賃金法に基づき、事業主は各地域の最低賃金額以上の賃金を支払うことが義務づけられています。技能実習制度は、開発途上地域への技能移転を目的としていますが、だからといって労働者としての権利が制限されるわけではありません。

もし最低賃金を下回る金額で雇用契約を締結した場合、企業は最低賃金額との差額を技能実習生に支払う必要があり、法律違反として罰則の対象にもなります。

なお、技能実習生の受け入れで知っておくべき「監理団体」の詳細については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

関連:技能実習生の受け入れで知っておくべき「監理団体」とは?役割や選ぶ際のポイントをご紹介! – 株式会社 グローバルヒューマニー・テック

まとめ

外国人労働者を雇用する企業がとくに遵守すべき主要な法律としては、労働基準法による均等待遇の原則、出入国管理及び難民認定法(入管法)による在留資格の確認義務、そして労働施策総合推進法による外国人雇用状況の届出義務の3つです。

これらの法律の要点を深く理解し、採用前の在留資格の確認、労働条件の平等性の徹底、そして労働保険や社会保険への適正な加入を怠らないことが、罰則のリスクを回避し、外国人労働者の安定的な定着を実現するポイントになります。

なお、株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、グローバル人材に対する総合的な生活支援を実施しており、外国人の受け入れにおける豊富な経験と知識を有しています。ご相談・お見積りはもちろん無料です。まずはお気軽にお問合せください。⇒株式会社グローバルヒューマニー・テックに相談する