家族滞在ビザで日本で就労するためには、特別な許可が必要です。許可取得のためには、手続きや必要書類に関する詳細な理解が欠かせません。

本記事では、家族滞在ビザで就労するために必要な許可や概要、雇用する場合の注意点についてご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

編集部

家族滞在ビザの概要

就労ビザや経営管理ビザを持つ外国人が家族と一緒に日本で生活するためには、「家族滞在ビザ」が必要です。家族滞在ビザを取得すると、母国から家族を呼び寄せ、日本で1年以上一緒に暮らすことができます。

このビザの対象者は、就労者が扶養する配偶者や子ども、養子や認知している非嫡出子に限られます。兄弟や両親など、配偶者や子どもではない家族は原則として対象外です。

対象の在留資格

家族滞在ビザの対象となるのは、以下の在留資格で滞在する外国人の「配偶者」と「子ども」たちです。

  • 教授
  • 芸術
  • 宗教
  • 報道
  • 高度専門職
  • 経営・管理
  • 法律・会計業務
  • 医療
  • 研究
  • 教育
  • 技術・人文知識・国際業務
  • 企業内転勤
  • 介護
  • 興行
  • 技能
  • 文化活動
  • 留学
  • 特定技能(2号)

上記の「文化活動」と「留学」以外は就労ビザとなりますが、同じ就労ビザでも「外交」「公用」「特定技能1号」「技能実習1号・2号」は含まれません。また、子どもは非嫡出子や養子も含まれ、親に扶養されている限り、成人している子どもも対象です。

在留期間の種類

家族滞在ビザの在留期間は、最長5年から最短3ヵ月までの11種類が設定されています。具体的な期間については以下のとおりです。

  • 5年
  • 4年3ヵ月
  • 4年
  • 3年3ヵ月
  • 3年
  • 2年3ヵ月
  • 2年
  • 1年3ヵ月
  • 1年
  • 6ヵ月
  • 3ヵ月

扶養者の在留期間が終了すると、家族滞在ビザも同時に満了してしまいます。扶養者の在留資格が失効した場合、家族滞在ビザのみを更新することはできません。

家族滞在ビザで就労するために必要な許可とは?

次は、家族滞在ビザで就労するために必要な許可について解説します。

  • 包括許可
  • 個別許可

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.包括許可

家族滞在ビザを持つ者が就労するためには、特定の条件下でのみ資格外活動の「包括許可」が必要です。申請者が週に最大28時間以内で働き、その活動が風俗営業に該当しない場合に与えられるケースが多いです。

なお、包括許可を得るために必要な条件としては、以下が挙げられます。

  • 申請者が従事する活動が、既に持っている在留資格に支障をきたさない
  • 申請者が現に有する在留資格に基づく活動を実際に行っている
  • 申請に関わる活動が、特定技能や技能実習を除く在留資格活動に該当する
  • 申請活動が法令に違反する活動ではない
  • 申請者が収容令書の発付や意見聴取通知の送達を受けていない
  • 申請者の素行が良好である
  • 在留資格に基づく活動を行っている公私の機関が資格外活動を行うことに同意している

参考:資格外活動許可について|出入国在留管理庁

2.個別許可

個別許可とは、具体的な就労先や業務内容が明確に指定される資格外活動許可です。収入や報酬を受ける活動に従事する時間を客観的に確認することが困難な場合に申請します。

たとえば、個人事業主として活動する場合や、勤務時間を客観的に確認するのが困難なケースでは、時給や週給などで報酬が支払われないため、個別許可が必要になります。この許可では、スーパーのレジ打ちや工場作業といった「単純労働」は認められません。

また、一度許可された就労先や業務内容を変更する際には、許可を再申請しなければなりません。個別許可は、報酬の形態や勤務内容が包括許可の範疇に含まれない場合に求められる点が特徴です。

就労のために家族滞在ビザから他の在留資格へ変更する3つのパターン

次は、就労のために家族滞在ビザから他の在留資格へ変更するパターンについて紹介します。

  • 技術・人文知識・国際業務
  • 定住者
  • 特定活動

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.技術・人文知識・国際業務

家族滞在ビザを持っている外国人が正社員として企業に就職する場合、週28時間以上働く予定であれば、在留資格を「技術・人文知識・国際業務」ビザへ変更するのが一般的です。このビザは、専門的な知識や技術が必要な職種に従事する人を対象としており、大学卒業以上の学歴や、10年以上の実務経験を条件としています。

ビザの変更を申請する際には、職種に応じた専門性を証明する資料が必要です。たとえば、エンジニアや教育者、国際ビジネス関連の職に就く場合、専門分野内での知識やスキルが求められます。

2.定住者

日本の義務教育を修了している外国人が高校卒業後に就職を希望する場合、在留資格を「定住者」へ変更することが可能です。定住者ビザは身分系在留資格の一種であり、在留期間内であれば就労制限がなく、自由に働けます。

この変更が認められるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 日本の義務教育(小学校と中学校)を修了している
  • 日本の高等学校を卒業しているか、卒業見込みである
  • 家族滞在ビザを持っている、または留学ビザを持っていて家族滞在ビザの要件を満たしている
  • 入国時に18歳未満である
  • 就労先が決定している(内定を含む)
  • 住居地の届出など、公的義務を履行している

将来的に大学進学を希望しており、学費を稼ぐために一時的に就職する場合も、「定住者」ビザへの変更が可能です。

なお、定住者については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:在留資格「定住者」とは?要件から雇用するメリット・注意点まで詳しく解説します!

3.特定活動

日本の義務教育を修了していない外国人が高校卒業後に就労を希望する場合、「特定活動」ビザに変更できます。このビザは個々の活動内容に応じて許可される特殊な在留資格で、認定された就労活動が可能です。

特定活動ビザに変更するための要件は、以下のとおりです。

  • 日本の高等学校を卒業しているか、卒業見込みである
  • 扶養者が日本に身元保証人として在留している
  • 家族滞在ビザを持っている、または留学ビザを持っていて家族滞在ビザの要件を満たしている
  • 入国時に18歳未満である
  • 就労先が決定(内定を含む)している
  • 住居地の届出等、公的義務を履行している
  • 高校に初めから入学しているか、途中から編入学した場合は日本語能力試験N2程度の日本語能力(またはBJTビジネス日本語能力テスト400点以上)を有している

この条件を満たすと、「特定活動」ビザに変更し、認定された就労活動が可能になります。

家族滞在ビザで日本に滞在する外国人を雇用する場合の注意点は3つ

次は、家族滞在ビザで日本に滞在する外国人を雇用する場合の注意点について紹介します。

  • 在留カードを確認する
  • 就労時間に注意する
  • 在留期限を把握する

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

1.在留カードを確認する

在留カードは、外国人が合法的に滞在し、日本で就労するための資格や期限が明記されています。雇用主は、採用過程で必ず在留カードの原本を確認し、在留資格や在留期限、本人確認をしなければなりません。

「家族滞在」の在留資格を持つ外国人は、週に28時間までの就労しか許可されていないため、風俗関連業種での就労は禁止されています。これらの確認を怠ると、不法就労の助長につながり、企業側にも罰則が科される可能性があります。

2.就労時間に注意する

「家族滞在」の在留資格での就労可能時間は、週28時間までと厳しく制限されています。複数の場所で働いている場合は、合計時間が28時間を超えないように管理しなければなりません。

雇用主としては、自社だけでなく、従業員がほかで働いていないか確認し、すべての就労時間が規定内に収まっているかの把握が求められます。もし、不法就労が発覚した場合、企業が法的な責任を問われる場合もあります。

3.在留期限を把握する

在留期限が切れた状態での就労は、法的にオーバーステイとみなされ、不法就労の助長として企業も罰せられるリスクがあります。ビザの更新に関しては、入国管理局からの自動通知はありません。

そのため、企業としては外国人従業員のビザ有効期限をカレンダーに記入し、更新時期が近づいたら積極的な通知が求められます。ビザの更新手続きは、在留期限の3か月前から可能なため、早めから準備や手続きを進めておきましょう。

なお、在留カード更新はいつからできるのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:在留カードの更新はいつからできる?更新の方法や期限が切れた場合の対象方法を徹底解説!

家族滞在ビザでの就労でよくある3つの質問

次は、家族滞在ビザでの就労でよくある質問について紹介します。

  • 質問1.包括許可の「28時間制限」を超過した場合は?
  • 質問2.扶養者と離婚した場合は?
  • 質問3.家族滞在ビザが企業にもたらすメリットとは?

それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

質問1.包括許可の「28時間制限」を超過した場合は?

「28時間制限」を超えた場合、本人はビザの更新時や変更申請の際、資格外活動許可違反が理由で不許可となる可能性があります。さらに、日本国内から強制退去の対象となり、その後5年間、日本への入国ができません。

また、雇用者側は、不法就労を助長した企業や個人には最大で3年の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられます。そのため、必ず個別許可を申請するか、適切な就労ビザの取得が必要です。

質問2.扶養者と離婚した場合は?

家族滞在ビザは、日本に一定の資格で在留している者の配偶者や子として扶養されている場合にのみ有効です。そのため、離婚により扶養関係が解消された場合、家族滞在ビザはその根拠を失います。

このような状況に直面した場合、現在のビザでは日本での合法的な滞在や就労ができなくなるため、速やかに新たな在留資格への変更を申請が求められます。たとえば、特定活動ビザや技術・人文知識・国際業務ビザなど、自身の状況に合ったほかの在留資格に変更が必要です。

質問3.家族滞在ビザが企業にもたらすメリットとは?

家族滞在ビザを活用すると、外国人従業員が家族とともに日本で生活できます。その結果、従業員の満足度が高まり、安定した生活基盤のもとで長期的な勤務が可能です。

外国人従業員が家族のサポートを受けながら働ける環境は、彼らが母国に帰国する動機を減少させ、企業内での定着を促進します。専門性が高い職種やグローバルなビジネス展開を行う企業にとって、離職率の低下と人材の維持に直結します。

まとめ

本記事では、家族滞在ビザで就労するために必要な許可や概要、雇用する場合の注意点についてご紹介しました。

家族滞在ビザで就労するためには、「包括許可」や「個別許可」が必要になります。また、就労のために他の在留資格へ変更する方法も3パターンありますが、それぞれに変更できる条件が定められており、すべての外国人がこの条件を満たせるわけではありません。

もし、企業が家族滞在ビザで滞在する外国人の雇用を検討する場合は、在留カードにて、在留資格や在留期限、本人確認を欠かさないようにしてください。

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