
育成就労における監理支援機関とは、受入れ企業(特定受入れ機関)に対して指導・監督・支援を行う許可法人です。従来の技能実習制度における「監理団体」が、人材育成と法令遵守の機能を大幅に強化され、名称変更されます。
多くの企業が育成就労における監理支援機関の選定において「従来と同じ付き合いでよいのか」「何がリスクになるのか」という不安を抱えているのではないでしょうか。外部監査機能が適切に働くパートナーの選定が新制度では、欠かせません。
従来の制度におけるトラブルの多くは監理機能の不全に起因しているため、以下の条件を確認しておきましょう。
- 条件①行政処分データから「名義貸し」のリスクを排除する
- 条件②「選ばれる職場環境」を整備する
- 条件③制度改正の核となる「外部監査人」の実効性を重視する
この記事では、企業にとって「失敗しない受入れ」の絶対条件や、監理支援機関を見極めるステップ、育成就労制度と監理支援機関の変更点を解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。


企業にとって「失敗しない受入れ」の3つの絶対条件
新制度「育成就労」での成功を確実にするためには、過去の技能実習制度で発生した問題の「根本原因」を知る必要があります。ここでは、企業にとって受け入れで失敗しないための条件を解説します。
条件①行政処分データから「名義貸し」のリスクを排除する
法務省および出入国在留管理庁が公表している監理団体の許可取消し事案を確認すると、許可取り消しの理由として、以下のような違反が散見されます。
- 名義貸し:自らの名義を他人に貸して監理事業を行わせる行為
- 監査の不実施:法令で定められた定期監査を行わず、書類のみ形式的に作成する行為
- 人権侵害の看過:パスポートの取り上げや、不当な行動制限を黙認する行為
これらのデータは、受入れ企業が「監理団体に任せているから安心」と思い込んでいても、実際には機能していなかったケースが多々あることを示しています。新制度では、こうした「名義だけの監理」を排除するため、要件が厳格化されます。
このため、選定においては「過去に行政処分歴がないか」だけでなく、「監査体制が形骸化していないか」を確認しなければなりません。
条件②「選ばれる職場環境」を整備する
法務省の調査結果によると、技能実習生の失踪動機には「低賃金」のほかに、「指導員との人間関係」や「事前の説明と実態のミスマッチ」が含まれています。育成就労制度では、一定の要件(就労期間1〜2年+日本語能力等)を満たせば、本人の意向による転籍(転職)が可能です。
このため、これまで以上に「選ばれる職場」でなければ、人材が流出するリスクが高まります。このリスクを回避するためには、単なる事務代行ではなく、外国人材からの生活相談へ親身に対応して、企業と人材の間に入って定着を支援できる「現場力のある監理支援機関」が不可欠です。
なお、育成就労制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:育成就労制度とは?導入に向けたステップと技能実習との違い
参考:技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームの調査・検討結果 概要|法務省
条件③制度改正の核となる「外部監査人」の実効性を重視する
新制度の特徴の1つが、監理支援機関に対する外部監査人の設置義務化です。従来の技能実習制度では選択制でしたが、癒着を防ぐために必須となります。
これにより、監理支援機関自体が第三者(弁護士や公認会計士など)からチェックを受ける体制になります。企業が選ぶべきは、この外部監査人を形式的に置くだけでなく、積極的にコンプライアンス体制の強化に活用している機関です。
監査が厳しいと、企業にとって「法令違反による受入れ停止リスク」を最小限にするためのメリットとなります。
参考:技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第16回)|出入国在留管理庁

信頼できる監理支援機関を見極める3つのステップ
公表されている制度要件とトラブル事例を踏まえ、実際に企業が監理支援機関を選定・変更する際の具体的なチェックポイントを解説します。
ステップ①外部監査人の「独立性」と「専門性」を確認する
新制度で義務化される外部監査人ですが、誰が務めているかによって機能は大きく異なります。選定時には以下の点を確認してください。
- 監査人について
監理支援機関の役員と親族関係にあるなど、なれ合いの関係ではないか確認する
- 専門性について
労働法令や入管法に精通した弁護士や社会保険労務士が選任されているか確認が必要となる
外部監査人が適切に機能している機関は、トラブルの予兆を早期に発見して、企業を守るための適切な是正勧告を行ってくれます。
ステップ②日本語教育への「投資」と「実績」を評価する
育成就労制度のゴールは、「特定技能1号」への移行のため、日本語能力試験(N4相当など)への合格が必須条件です。これまでの「実習管理」に加え、以下の「教育機関」としての機能を持っているかが問われます。
- 独自の日本語学習カリキュラムを持っているか
- 試験対策のノウハウや、合格へのインセンティブ制度があるか
- 特定技能への移行支援実績(または計画)が具体的か
教育支援が弱い機関を選ぶと、3年後に人材が特定技能へ移行できず、帰国せざるを得なくなります。その結果、企業の長期的な人員計画が崩壊します。
なお、育成就労制度の職種については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:育成就労の職種は何が変わる?成功させる3つのポイント
ステップ③受入れ企業への「フィードバック能力」を見る
転籍が認められる新制度では、外国人材の満足度が大切です。よい監理支援機関は、定期訪問の際に「問題ありません」と報告するだけでなく、現場の小さな不満や改善点を企業側に正直にフィードバックします。このため、以下の確認が欠かせません。
- 定期訪問時に、外国人材と母国語で面談を行っているか
- 企業側にとって耳の痛い話(改善提案)もしてくれるか
- 夜間や休日の緊急連絡体制が整備されているか
これらを確認するため、契約前に「どのような頻度・形式で報告が行われるか」を具体的にヒアリングしましょう。

育成就労制度と監理支援機関の変更点
ここでは、育成就労制度における監理支援機関の変更点や役割を整理します。
変更点①名称変更と役割の厳格化
従来の「監理団体」から「監理支援機関」へと名称が変わります。これは、単なる呼び名の変更ではなく、「人材育成」と「適正な監理」の両立を強く求める意図があります。
許可要件も厳格化され、一定の財産的基盤や相談対応体制の充実が必須です。法令違反時のペナルティ強化や、受入れ企業への指導監督機能の実効性が問われるようになり、従来の「形式的な監査」では許可が維持できなくなる点が違いです。
参考:監理支援機関の外部監査人その他許可要件|谷島行政書士法人グループ
変更点②外部監査人の設置義務化
監理支援機関の中立性を確保するため、外部監査人の設置が法的義務となります。従来の技能実習制度では任意でしたが、受入れ企業と監理支援機関の癒着や不正の隠蔽を防ぐため、第三者(弁護士や公認会計士等)によるチェックが必須です。
これにより、監理支援機関自体が適正に業務を行っているかが厳しく監視されるため、企業側も外部監査人を通じてコンプライアンス体制を確認される機会が増えます。
変更点③転籍支援の役割追加
新制度では、従来の「やむを得ない事情」に加え、一定の要件を満たせば「本人意向による転籍」が可能です。これに伴い、監理支援機関には新たに転籍支援の義務が課されます。
具体的には、ハローワーク等と連携した転籍先の紹介や、転籍に伴う事務手続きのサポート、転籍元の企業との連絡調整などが必要です。人材を「囲い込む」のではなく、労働市場の流動性に対応した、より高度なサポート能力が求められます。

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株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、特定技能をはじめとする外国人材の紹介・支援において豊富な実績を有している点が特徴です。サポート体制と、人材の定着を促すきめ細やかな生活支援により、企業の安定的な法令遵守を徹底した人材確保を実現します。
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育成就労と監理支援機関についてよくある3つの質問
ここでは、育成就労と監理支援機関についてよくある質問をご紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。
質問①従来の監理団体はそのまま利用できますか?
そのまま利用できるとは限りません。既存の監理団体も、新制度の下で改めて「監理支援機関」としての許可を受けなければなりません。
外部監査人の設置や財産的基盤など、より厳格化された新要件を満たせない団体は許可が下りない可能性があります。現在、契約している団体が新基準に対応できる体制を整えているか、移行申請の準備状況はどうなっているか、早急にヒアリングして確認しましょう。
質問②外部監査人の費用は企業が負担すべきですか?
直接的な請求ではなく、「監理費」の一部として間接的に負担する場合が一般的です。外部監査人への報酬は、原則として監理支援機関が運営コストとして支払います。
しかし、そのコストは監理業務全体の費用に含まれるため、結果的に受入れ企業が支払う毎月の監理費に反映される可能性が高いです。契約前に、監理費の内訳や値上げの有無を確認して、コスト構造が適正であるか説明を求めましょう。
質問③3年後に不合格で特定技能へ移行できない場合はどうなりますか?
育成就労期間(原則3年)内に、特定技能1号の水準となる試験(技能・日本語)に合格できない場合、原則として帰国しなければなりません。しかし、一定の日本語能力水準にあるなど本人の努力が認められる場合は、再受験を目的として最長1年の在留期間延長(再育成就労)が認められる見込みです。
企業にとって大切なのは、「いかに期間内で確実に合格させるか」であり、選定時は監理支援機関が持つ教育カリキュラムの質や、過去の試験合格実績を厳しくチェックすべきです。

信頼できる監理支援機関とパートナーシップを築こう!
育成就労制度への移行は、単なる制度変更ではなく、外国人材との向き合い方を見直すチャンスです。失敗しないためには、以下のステップで「信頼できるパートナー」を見極めてください。
- ステップ①外部監査人の「独立性」と「専門性」を確認する
- ステップ②日本語教育への「投資」と「実績」を評価する
- ステップ③受入れ企業への「フィードバック能力」を見る
適正な監理支援機関と連携すれば、コンプライアンスリスクを回避できるだけでなく、外国人材が定着して、企業の成長戦力として活躍する未来があります。まずは、現在契約している団体や候補となる機関があれば、新制度の要件にどのように対応しようとしているか、ヒアリングからはじめてみましょう。
なお、株式会社グローバルヒューマニー・テックでは、グローバル人材に対する総合的な生活支援を実施しており、外国人の受け入れにおける豊富な経験と知識を有しています。ご相談・お見積りはもちろん無料です。まずはお気軽にお問合せください。⇒株式会社グローバルヒューマニー・テックに相談する



