
配偶者ビザ(日本人の配偶者等)を持っている方は、原則として就労制限はありません。職種や労働時間を問わず、フルタイムでもパートでも自由に働けます。しかし、なぜほかの在留資格と違って自由度が高いのでしょうか。
この記事では、配偶者ビザに就労制限がない理由や就労ビザ・家族滞在ビザとの違い、配偶者ビザで就労する際の注意点について解説します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてください。


配偶者ビザに就労制限がない2つの理由
「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格(配偶者ビザ)には、原則として就労制限が一切ありません。職種や労働時間(フルタイムやパート、アルバイト)を問わず、日本人と同様に自由に働けます。なぜ配偶者ビザにはこのような自由が認められているのか、法的な背景と理由について詳しく解説します。
1.「身分・地位に基づく在留資格」であるため
日本の在留資格は、大きく「活動に基づく在留資格(就労ビザなど)」と「身分・地位に基づく在留資格」に分けられます。配偶者ビザは後者の「身分・地位に基づく在留資格」に分類されます。
このビザは、日本での「活動内容(=仕事内容)」に対して許可されるものではありません。「日本人や永住者の配偶者である」という身分・地位そのものにもとづいて許可されます。このため、日本での活動内容に制限がなく、結果として就労も自由に行えます。
2.「資格外活動許可」が不要なため
「留学」ビザや「家族滞在」ビザの人がアルバイトをする場合、原則として週28時間以内という制限があります。さらに、事前に入国管理局で「資格外活動許可」を取得しなければなりません。
しかし、配偶者ビザは在留資格そのものが活動内容を制限していないため、この資格外活動許可を取得する必要が一切ありません。フルタイムの正社員はもちろん、複数の仕事の掛け持ちも法律上の制限なくできます。
なお、外国人労働者の勤務時間の制限については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:外国人労働者に勤務時間の制限はある?週28時間を守らなかった場合の罰則やよくある質問もご紹介!

就労ビザ・家族滞在ビザとの3つの違い
配偶者ビザの就労の自由度をより深く理解するために、ほかの代表的な在留資格と比較してみましょう。たとえば「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザや「家族滞在」ビザでは、「職種の自由度」と「労働時間」において、明確な違いが存在します。
1.職種の制限の有無(単純労働の可否)
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、大学や専門学校などで学んだ専門知識を活かす仕事(エンジニアや通訳、経理など)に限定されます。工場のライン作業や、コンビニのレジ打ち、飲食店のホールスタッフなどの単純労働に従事するのは、原則として認められていません。
一方、配偶者ビザには、この職種の制限が一切ありません。専門職はもちろん、単純労働とされる職種も含め、法律に反しない限りどのような仕事にも就けます。
2.労働時間の制限の有無(週28時間の壁)
「家族滞在」ビザ(就労ビザで働く外国人の扶養家族など)は、資格外活動許可を得ればパートやアルバイトが可能です。しかし、「週28時間以内」という厳格な労働時間制限が課せられます。
これを超えて働くと不法就労となり、次回のビザ更新が不許可になるリスクがあります。一方、配偶者ビザにはこのような時間の制限もありません。社会保険の加入が必要なフルタイム勤務も短時間のパート勤務も、本人の裁量で自由に選択できます。
なお、家族滞在ビザで就労するために必要な許可については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:家族滞在ビザで就労するために必要な許可とは?概要や雇用する場合の注意点を解説します!
3.学歴・職歴要件の有無
「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得・更新するには、原則として要件があります。関連する業務分野での大学卒業以上の学歴、または一定期間(通訳・翻訳等は3年、その他は10年)の実務経験が求められます。
しかし、配偶者ビザはあくまで「身分・地位」にもとづくビザであるため、本人の学歴や職歴は就労の要件となりません。学歴や職歴に関わらず、本人の能力や希望に応じて多様なキャリアを選択できる点が特徴です。

配偶者ビザで就労する4つの注意点
配偶者ビザは就労において非常に自由度が高いですが、注意すべき点があります。安心して日本で働き続けるために、以下の注意点に気をつけましょう。
1.配偶者としての実態が必須
配偶者ビザは、あくまで「日本人や永住者の配偶者である」という事実にもとづいて許可されている資格です。たとえ就労が順調であっても、夫婦としての実態(同居、生計の同一性、正常な婚姻関係)が失われていると判断されると、ビザの更新は不許可になります。
偽装結婚はもちろん、実質的に婚姻関係が破綻している(長期間の別居)場合も在留資格を失うリスクがあります。このため、就労以前に配偶者との関係維持が欠かせません。
2.離婚・死別した場合の手続き
万が一、配偶者と離婚したり死別したりした場合、その事実が発生した日から14日以内に入国管理局への届出が義務づけられています。この届出を怠ると罰則の対象となり、次回の更新にも悪影響が出ます。
また、離婚・死別後は「日本人の配偶者等」の在留資格の該当性を失うため、そのままではビザの更新はできません。一定の要件を満たして「定住者」ビザなど、ほかの在留資格への変更申請を検討する必要があります。
3.安定した生計の維持
配偶者ビザの更新時には、日本で安定した生活を送れているか(生計の安定性)も審査されます。就労制限がないからといって働かなかったり、収入が極端に不安定だったりする場合があげられます。
扶養者(日本人配偶者など)の収入で生計が成り立っていれば、問題ありません。しかし、夫婦ともに収入が不安定だと審査に影響が出る可能性があります。
このため、配偶者ビザを持つ方が安定した就労(フルタイムや安定したパート収入)を行うのは、世帯収入の安定性を示す証拠となり、ビザ更新において有利に働く側面があります。
4.一部禁止されている業務(風俗営業等)
就労制限が原則ない配偶者ビザですが、職種選択には注意が必要です。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)の対象となる一部の業務(性的なサービスを伴う店舗での接客など)については、慎重な判断が求められます。
法律(入管法)上、配偶者ビザの方がこれらの業務に従事しても、直ちに不法就労となるわけではありません。しかし、ビザ更新の審査において、出入国在留管理庁は「公序良俗」や「在留資格の品位」を重視します。
風俗営業に従事している事実は、安定した婚姻生活の実態に疑義を生じさせる要因とみなされ、更新が不許可となるリスクが高くなります。法律違反でなくとも、在留を継続する上で実質的に避けるべき業務です。

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配偶者 ビザ 就労でよくある3つの質問
配偶者 ビザ 就労でよくある質問をご紹介します。それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
質問1. 配偶者ビザで会社経営(起業)はできますか?
配偶者ビザは就労制限がないため、会社に雇用されるだけでなく、自分で会社を設立して代表取締役として経営活動を行う場合も認められています。「経営・管理」ビザのように、資本金や事業所の確保といった厳しい要件をクリアする必要もないため、日本人と同様の手続きで起業が可能です。
しかし、事業が軌道に乗らず収入が極端に不安定な状態が続くと、ビザ更新時の「生計の安定性」の面で不利になる可能性があります。このため、事業計画は慎重に立てなければなりません。
質問2.就職・転職時に提出する書類はありますか?
就労を開始したり、転職したりする際に、入国管理局への個別の届出や許可申請は不要です。これは、特定の勤務先(活動機関)に紐づいていない「身分・地位にもとづく在留資格」の特徴です。
しかし、離婚や死別した場合は14日以内の届出が必要です。また、雇用保険や社会保険の手続き、税務上の手続き(源泉徴収や年末調整)は日本人従業員と同様に発生します。
勤務先の指示に従って必要な書類(在留カードのコピー、マイナンバーなど)を提出してください。
質問3.扶養に入ったままパートで働くことは可能ですか?
配偶者の税務上または社会保険上の扶養に入りながら、パートやアルバイトとして働いても、在留資格上の問題はありません。しかし、注意すべきは日本の税制・社会保険制度のルールです。
年収が一定額(一般的に103万円、106万円、130万円の壁など)を超えると、自分で所得税や住民税を支払う義務が生じる場合があります。また、配偶者の扶養から外れて、自分で社会保険に加入する必要が出ます。扶養の範囲内で働きたい場合は、勤務先に相談し年収(月収)を調整しなければなりません。

まとめ
配偶者ビザは「身分・地位にもとづく在留資格」であるため、原則として職種や労働時間の就労制限は一切ありません。単純労働やフルタイム勤務、起業、「資格外活動許可」も不要です。
しかし、この自由はあくまで「配偶者としての実態」があることが大前提です。離婚や死別時には手続きが必要であり、ビザ更新時には生計の安定性も審査されます。
これらのルールと注意点を正しく理解し、日本でのキャリアプランに役立ててください。また、「配偶者ビザ」を持つ方は就労制限がないため、企業にとって重要な採用候補となります。しかし、受け入れ体制や外国人特有の生活サポートに不安を感じる企業も少なくありません。
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